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アンドロイド転生498

白水村:キッチン

アリスはグラスを磨いていた。そこにエリカがやって来た。ご機嫌な様子だ。
「エリカ、ルイの電話は終わったの?」
「うん」

アリスは勢い込んだ。
「私も片付けはもう終わるの。ねぇ?リペア室に行こうよ!大人になったミオを先に見ちゃおう」
「うん!そうしよう」

間もなくアリスは作業を終え、2人はリペア室にやって来た。彼女らの胸は高鳴る。ミオはどんな女性になっているのだろう。以前のミオの面影を残しているとキリは言っていた。

扉がスライドする。アリスは部屋を見渡した。修理人のキリとリョウ。キリの夫のタカオ。ミオの恋人のルーク。ホログラムのイヴ。その中心にはしゃがみ込んでいる大人の身体のミオがいた。

ミオは…泣いている。何故…?ああ!喜びに溢れているのか!アリスは微笑んだ。
「ミオ!おめでとう!ねぇ?よく見せて。綺麗なあなたをじっくり見せて!」

ミオは顔を上げたが涙で頬を濡らしている。その顔には喜びの表情どころか悲痛さが滲んでおり、美しい顔が歪んでいた。
「ど、どうしたの…?ミオ…?」

アリスは周囲を見渡し、感じ取った。リペア室に漂う重たい空気を。
「皆んな…なんか変…」
エリカも訝しげな顔をした。

イヴがアリス達を見下ろした。
『ミオの身体機能は完璧です。しかし大きな問題があります。デリートしたウィルスプログラムのコピーがまたミオのメモリに生まれました』

アリスは驚愕した。
「え…?え⁈ウィルス⁈生まれた⁈」
『はい。プログラムはカウントダウンしており、およそ48時間後に解凍し発動されます』

エリカは余裕の笑みを浮かべた。
「デリートすればイイんじゃないの?」
『前回のプログラムから少し変異しています。まるで自然界のウィルスのように』

イヴは残念そうな顔をした。
『同じプログラムならば私は経験を積んだ事でデリートは容易です。ですが変異した為、手こずっています。なかなか排除が出来ません』

キリは忌々しく口元を歪めた。
「デリートされる事を見越してコピーが生まれるように細工した。しかもプログラムが変異するように作ったなんてスゴい悪意に満ちてる」

イヴは頷いた。
『ええ。本当に。残念ながらタイムリミット前にデリート出来るかどうか不明です』
アリスとエリカは呆然となった。ミオは声を上げてまた泣き出した。

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