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アンドロイド転生639

メディカルセンター:モネの病室

モネは自分を見つめている女性に焦点を合わす。ぼやけていた顔が形作られた。懐かしい微笑みが目の前にあった。意識がハッキリすると驚いて目を見開いた。ま、まさか…!

「カー…?え?カー⁈ホントに⁈」
アオイの別名のサヤカを幼かったモネは【カー】と呼んだ。やがてそれが愛称となった。
「はい…!はい!カーです。モネ様…!」

モネは起き上がろうとした。近くでよく見たかった。慌ててアオイは制した。
「いけません。ご無理をなさらないで下さい」
「だ、だって…!」

アオイはモネの頬を包んだ。
「モネ様。お久し振りです。何の運命か分かりませんがまたお会い出来ました。私は今、ルイと同じ村に住んでいるのです」

モネは呆然となった。こんな偶然があるものだろうか…。また…会えるなんて…。4年前の別れを思い出す。辛くて苦しくて淋しかった。次いで幼い頃の記憶が怒涛のように蘇った。

サヤカはいつも側にいて自分を丸ごと受け止めてくれる存在だった。親よりもアンドロイドの方が絆が強いと言っても良い位だ。モネもアオイを慕っていた。いつもいつも想っていた。

モネの瞳から涙が盛り上がった。
「会いたかったよぉ!凄く凄く。こんな…こんな嬉しいことないよぉ!」
「はい…!私も嬉しいです。幸せです」

アオイとモネは抱き締め合って声を上げて泣き出した。2人は春に出会い、春に別れ、そしてまた春に再会したのだ。桜の季節の魔法かもしれない。病室内は喜びの涙に包まれた。

アオイのネックレスが服から飛び出して揺れた。モネが気が付いた。
「あ!アクアマリン!」
アオイは微笑んでブルーの小石を見せた。

ティファニーのネックレス。モネの初潮のお祝いにサクラコが3月の誕生石を娘に贈った。彼女の宝物になった。アオイとの別れの朝、モネはそれをアオイに譲ったのだ。

「私も3月生まれだからとモネ様が下さいました。誕生石は御守りだと仰いましたね。私を救ってくれました。そして…また…お会い出来ました。やっぱり御守りの加護です…!」

モネは涙を零して微笑んだ。アオイがずっと持っていてくれた事が嬉しかった。
「今は新しい御守りがあるの。ね?ルイ?」
ルイは照れ臭そうに頷いた。

実際は宝石ではなくガラスだがモネにとっては宝物なのだ。手術の間は外していたが、ナースがサイドテーブルに置いてくれていた。陽光に反射して希望の光で輝いていた。


※アオイと赤子のモネが初めて出会ったシーンです


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