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アンドロイド転生431

新宿歌舞伎:クラブ夢幻

ミオの潰れた顔面をルークは見つめた。目の位置がおかしい。その瞳から涙が溢れていた。よくまぁ…ファイトクラブ仕様のマシンに勝利したものだとルークは感心していた。

ミオは薄く笑った。実際は歪んだのだが。
『もう戦いはこりごり』
ルークは愛おしげにミオをの頬を撫でた。
「今直ぐにイヴに診てもらおう」

イヴの声がルークとミオの内部に響く。
『顔面や首の損傷が酷いです。腹部から大量の油が抜けています。何かで巻いて下さい。拳は使い物になりません。機能停止にはなりませんが、この身体は換えるしかないでしょう』

ミオの瞳が輝く。
『じゃ、じゃあさ?大人の身体にして貰おうかな?ルークに見合うような…25歳位の。いい?ルークはそれでも?』

14歳の子供モデルが嫌だった。成長したかったのだ。今まで何度も身体を換えようと思ったが、その度にルークが反対した。生まれたままの姿が良いと彼は言っていたのだ。

ルークは頷いた。この身体はもう使い物にならないし換えるしかないのであればミオの望みの大人の女性に変化しても良いと判断したのだ。ミオにとって朗報だった。目を細めて喜んだ。

ミオはイヴに問うた。
『ね?ね?ウィルスはどう?開かなければ大丈夫?ゲンはね?…私にファイルを仕込んだヤツはね?苦しめって言ったの…怖かった』

イヴは声に不快さを滲ませた。
『ファイルは凍結されています。一体何なのか分かりません。調べるには時間を要します。キリ達と精査します』
ミオは溜息をついて頷いた。

ルークはミオの髪を撫でた。
「マサヤを探す。待ってろ。すぐに戻るからな」
『分かった。早く事を済まそう。そして早くホームに帰ろう。おうちがイイ』

ルークは立ち上がってNo.8を振り返った。
「よし。さっさとやろう。ヤツを探すぞ」
「はい」
ルークとNo.8は周囲を見渡した。

そこに上階のVIPルームからクレハが悠然と降りて来た。ニッコリとする。
「おめでとう。勝ったね。やっぱり強いね」
ルークは頭を下げた。元主人なのだ。

クレハは辺りを見回す。
「マサヤを連れて行くんでしょ?事務所だと思う。VIPルームにはいなかったから。こっちに来て」
ルークとNo.8はクレハに付いて行った。

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