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アンドロイド転生419

新宿歌舞伎町:クラブ夢幻

ルークは連打しながら相手の背面に回り込んだ。これが狙いなのだ。頃合いを図り、宙空に飛び上がった。敵に殴り掛かると薙ぎ倒した。その背中にルークは馬乗りになった。

次の急所の頚椎を折るつもりだった。すかさず右腕を回す。丸太のような上腕が敵の首を捕える。左手で頭を横に向けた。渾身の力を込めて捻った。相手も負けていない。攻防が続く。

敵が暴れるのをガッチリと押さえ込み、ギリギリと回していく。双方の顔が歪む。もう少し!もう少しだ…!何としてもやる!早く倒し、逃げたゲンを追わねばならない。

最後の一押しで破壊音が響き、首が折れた。一回転させるとガクリと頭が落ちた。それでも敵は降参しない。反撃をしてくる。だがやる!最後の急所は頭蓋だ。CPUが設置されているのだ。

敵はルークを背に乗せたまま起き上がった。全身を激しく震わせ、咆哮を上げると背負い投げした。ルークは床を転がり、蹲っている人間達に激突した。人々は苦痛の声を上げた。

敵は頭をぶら下げながら触覚で椅子を探り当て持ち上げると闇雲に床を激しく連打した。あわよくばルークに当たれば良いのだ。だがルークではなく人間達に当たった。悲鳴が上がる。

ルークは焦る。敵を早急に機能停止にせねばならない。相手が発火すると言う選択をしたら店内は火事になってしまう。それはまずい。時間勝負だ。早くやれ!急所の頭蓋を狙え。

アンドロイドの自己犠牲的攻撃の最後の手段として発火と言うものがあった。全身を急速に高温化させて燃えるのだ。それでトワも、タケルと共に戦った仲間も犠牲になったのだ。

ルークは敵の胸に両脚で蹴り倒した。仰臥すると馬乗りになり頭を掴んで何度も床に打ちつけた。敵の腕がルークを掴む。物凄い力だ。だが相手の頭蓋に火花が散った。今がチャンスだ。

ルークは両手の拳を組むと天高く振り上げた。相手の額を見据えた。目標を定める。ルークの目が見開いた。勢い良く拳を振り下ろすと激しい破壊音と共に敵の額が陥没した。

青い火花が散り、血を模した赤い油の飛沫が飛んだ。敵の全身が痙攣した。だが腕を振り回して反撃する。なんたる執念か。間髪を入れずルークは再度拳をめり込ませた。

顔面が潰れ、額が粉砕した。頭蓋内の電気信号がバラバラに点灯した。CPUが狂ったのだ。激しく痙攣したがやがて震えが止まった。もう反撃してこない。機能停止した。死んだのだ。

ルークは立ち上がると出入り口を目指して駆け出した。人の屍の上を越えて行った。地下から階段を登り外に出たが、どこを見渡してもゲンはいなかった。舌打ちをして店内に戻った。

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