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アンドロイド転生311

東京某所:マサヤの住まい
(マサヤの視点)

マサヤは立体画像を眺めていた。アンドロイドのアランの目を通して一部始終を知った。TEラボの職員のキサラギトモエは酷く怯えている。どうやらアラン達を刑事だと勘違いをしているようだ。

TEラボに勤める人間のメール、通話、個人情報をアラン達に調べさせると5人の職員が廃棄されたアンドロイドを月に一度回収している事が分かった。その報酬と思われるスイス口座も発見した。

この5人がマシンの身体を造り直して盗みをさせていると思ったが横流しをしているようだ。回収車がやってくる。それが大元だろう。
『マサヤ様。どうしますか?』

よし。この女を利用しよう。
「発信器を回収車に取り付けさせろ。言うことを聞けば逮捕はしないと言え」
『分かりました』

アランはポケットから発信器を取り出すとキサラギに渡し指示をした。彼女は何度も頷いた。
「そ、それをすれば見逃してくれますね?」
「ええ。回収車はいつ来ますか?」
「ま、毎月5日の深夜です」

キサラギは唇を震わせ縋ってきた。
「逮捕はしないんですね?本当ですね?」
「はい。守備良くやって下さい」
「必ず取り付けます。あ、有難うございます」

キサラギはバッグに発信器をしまうと、アラン達から逃るように走り去った。画像を眺めながらマサヤは満足げにニヤリと笑う。そうそう。警察だと思ってくれ。うまくいったな。

アランが無機質な声を出す。
『他の4人はどうしますか?』
「いや、あの女だけで充分だ。帰ってこい」
『はい』


茨城県:TEラボ前にて
(キサラギの視点)

キサラギは足早に歩き、振り向いた。刑事達は去っていった。追われたらどうしようかと思ったが、指示に従えばそれ以上はないようだ。立ち止まって胸に手を当て何度も深呼吸をした。

ああ。怖かった。横流しがバレたらクビになってしまう。でもクビになる事が怖いんじゃない。会社から訴えられて逮捕になる事を恐れていた。病気の娘に会えなくなるのかもしれないのだ。

キサラギは自分に誓った。来月の回収日に車に発信器を取り付ける。そうすれば逮捕されないのだ。それで何もかもお仕舞いにしよう。回収もやめる。もう関わり合いたくない。

娘の病気は重い。心臓移植をしなくてはならない。それに掛かる必要な残りの資金は銀行から借りよう。あとはドナーの連絡を待つだけ。キサラギのスマートリングが鳴った。

応答すると立体画像が宙空に浮かんだ。移植コーディネーターのヤマネだった。ま、まさか!
「キサラギさん!ドナーが出ました!」
「えっ!」

「アメリカです。移植は受け入れますね?」
キサラギの口元が震えた。
「も、勿論です…!でも…あ、あの…お金の準備がまだ…。でもでも!銀行に借ります!」

「時間がありません。直ぐにでも銀行から確約を貰えますか?」
「貰います!何としても!」
ああ!ホナミは助かる!助かるのだ!

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