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アンドロイド転生478

青海埠頭

スオウは息子のマサヤを見た。
「決着をつけなればならんな」
間もなく警察がやって来る。スオウはクラブ夢幻の責任者だ。逃げるつもりはなかった。

クラブの事件の発端はマサヤがアンドロイド達にルークらを倒せと指示をした事による。その戦いに巻き込まれて82名の人命が失われたのだ。マサヤは参考人として連行されるだろう。

社会問題となってマサヤの罪が問われるに違いない。この先、スオウ親子は新たな局面に立つのだ。マサヤは悲痛な顔をして声を震わせた。
「と、父さん…助けてくれよ」

アオイはマサヤの態度に呆れた。ついさっきまで父親を手玉に取ろうとしていたではないか。こんな男が、人間である事に胡座をかきアンドロイドを自由にするのか。

タケルの顔も怒りを帯びていた。マサヤはトワの死の謝罪もせず、夢幻の責任も逃れようとしているのだ。タケルは言い放つ。
「こんなクソ野郎は相手にしたくもない」

イヴの声がアオイ達の内側に響いた。
『警察が来ます。出発して下さい』
アオイは仲間を見渡した。
「みんな!行って!」

タケル達は頷き、車に向かって走り出した。アオイはクレハとスオウに歩み寄った。
「これを見て下さい」
宙空にチアキの立体画像が浮いた。

チアキがアオイを見つめる。
『終わったね。車を呼んだ。2人を乗せる』
アオイはクレハに顔を向けた。
「ソラ君は傷ついてません。家に帰します」

クレハは安堵の溜息をつき、スオウの胸に縋ると新たな涙を零した。ソラの名前を何度も呼んだ。アオイは2人に頭を下げた。
「辛い思いをさせてごめんなさい」

チアキはアオイ達を見渡した。
『メグは家に着いたら私達の事はデリートされるようにメモリにアラームをセットする』
カフェの場所を詮索されない為の措置だ。

アオイはクレハを見つめた。
「メグの記憶は消します。今日の一件は忘れます。ソラ君は…夢を見たと思ってくれると良いな。…脅迫に使われたなんて知らない方がいいもの」

アオイはバイクに跨った。
「では、行きます」
「ソラを…誘拐したのは絶対に許せない。でも…あなた達の気持ち…分かります」

「許してもらおうなんて思っていません。何があっても子供を大人の争いに巻き込んではいけなかった。私の罪です。忘れません」
アオイは頭を下げると埠頭を出て行った。

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