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アンドロイド転生486

白水村:中庭

エリカとアリスと人間達は洗濯物を干していた。空は澄み渡り、陽射しは暖かく谷は芽吹きの季節を迎えていた。早咲きの桜は可憐な花弁を広げている。新しい季節の始まりだ。

アリスは陽光を見上げて微笑んだ。集落全員の大量の洗濯物だが干す事は苦にならない。
「ああ。気持ちがイイねぇ」
エリカも笑顔で頷いた。

アリスはエリカの横顔を見つめた。
「綺麗に直って良かったね。見た時はビックリしちゃった。髪は全部無くなってるし、顔は焦げ焦げだったし…」

今から3日前のこと。スオウトシキとの戦いを終え、エリカ達は朝早くホームに戻って来た。ホームの人間やアンドロイドはプランABの成功とエリカ達の帰還を喜んだ。

だがアオイは胸を銃で撃たれ、タケルも胸と脚を損傷し左の眼球がなかった。エリカは髪が全て燃え、顔は真っ黒だった。あまりの姿に幼児達は恐怖して泣き出した。

ミオは顔面が陥没し、手は潰され首は千切れそうになり腹には穴が空いていた。恋人のルークが抱きかかえていた。すぐさま4人はリペア室で修理をされる事になった。

タケル、エリカ、アオイは翌日には元の姿に戻った。ミオは身体を換える事になった。今朝の食事の席でキリがミオのお披露目の宣言をした。全員が期待に喜んだ。

間もなく大人になったミオが皆の前に現れるだろう。ミオは成長する事に憧れていた。14歳から25歳になるらしい。美しい大人になり30歳クラスのルークと見合うようになるのだ。

アリスは微笑んだ。
「新しいミオが楽しみだなぁ!私達よりも年上になっちゃうね」
アリスは22歳クラス。エリカは18歳クラスだ。

だがリペア室ではたった今、ミオが恐怖に震えて泣いていた。念願の大人になれた喜びも束の間、デリートした筈のウィルスプログラムのコピーがミオのメモリに生まれたのだ。

ウィルスを仕込んだアンドロイドのゲンは容赦しなかった。デリートされる事など想定済みだったのだ。フォルダはカウントダウンしている。数字がゼロになった時に何が起こるのか。

アリスは洗濯物を勢い良く広げて干す。
「これが終わったらリペア室に行ってみようよ!皆んなよりも先にミオを見ちゃおう!」
エリカは頷いてニッコリとする。

建物内からキリの息子のルイがやって来た。エリカを見つけて瞳を輝かせた。
「干すのが終わったら…イイ?」
「電話?オッケー」

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