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アンドロイド転生660

目黒区:エマの住居

ホームページが削除されてもエマのセフレ募集の情報は拡散され続けた。彼女はピアニストとして成功しており、美人である事から認知度が高かった。好奇と興味で若者が集まって来る。

タケルはエントランスに出た。男性達が注目する中、息を吸い込んだ。
「ホームページに書いてある事は全て出鱈目です!今直ぐにお引き取り下さい!」

執着心の薄い現代の人々は諦めて去って行くが、また新たにやって来る。ホームページを削除しても一度歩き出した情報は消えないのだ。タケルは何度も引き取りを願った。

「動画に凄いのが出てるぞ!」
誰かが叫んだ。宙空に立体画像が浮かび上がった。人々が注目する。どよめきに包まれた。映像を観てタケルは衝撃を覚えた。

エマのベッドでの様子だった。数ヶ月前に乱行パーティをしたのだ。誰かが面白半分に録画した。それが流出されたのだ。人々の顔に好色の表情が浮かび、多いに湧き立った。

動画サイトにはコメントがアップされる。
〉凄え腰振り!たまんねぇ
〉喘ぎ声がスバラシイ!
〉エマちゃんとしました!最高でした!

家からエマが飛び出した。
「見ないで!見ないで!」
目当ての当人の登場で人々の興奮が更に上り詰めた。喜んでエマに群がって行く。

タケルはエマを抱き締めて屋内に引き戻した。
「いけません!危険です!」
「だって…!だって…!」 
エマの口元がワナワナと震える。

彼女の膝が折れ、床に座り込んでしまった。
「タ、タケルさん…。ど、どうしよう。ああ…。どうしてこんな事になったの?」
彼女の大きな瞳から涙が溢れ出した。


白水村の集落:リペア室

「さすがリョウね」
エリカは腕を組み、勝ち誇った笑みを浮かべて彼を見やった。リョウは苦虫を噛み潰したような顔をする。不服の現れだった。

コンピュータに精通している彼はエマのホームページを改竄する事も、エマの乱行パーティの動画をハッキングして流す事も容易だった。彼にとっては不本意ではあったが。

リョウは深々と溜息をついた。
「エリカよぉ…次から次と…お前…悪魔だな」
エリカは鼻で笑う。
「女の裸を盗撮したアンタに言われたくない」

リョウの最大の弱みを握っているエリカに彼は頭が上がらない。リョウの顔は暗かった。こうやって俺は罪を重ねるのか…。エリカはニヤリとする。
「まだやるからね。分かった?」

最後の仕上げとしてエマの友人のオクザワヒカリの罪を暴く。そう。エマが暴く事にする。人を陥れたエマをヒカリは許さないだろう。そして私もタケルを奪ったお前を許さない。

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