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アンドロイド転生499

リペア室

『デリート出来るかどうか不明です』
イヴの宣言にミオは泣き出した。恋人のルークが労わるようにミオを抱き締めた。
「イヴ、頼む。救ってくれ。お願いだ」

アリスは両手を口に当て言葉が出なかった。なんて事だろう。なんて恐ろしいのだろう。約48時間後にはデータファイルが解凍されてウィルスが発動されるのだ。一体何が起こるのか…。

ルークは立ち上がった。顔が怒りに燃えていた。
「ゲンを探す!」
ゲンとは、ミオのメモリにウィルスプログラムを仕込んだ男性型アンドロイドだ。

イヴは小首を傾げた。
『ゲンを見つけてどうするのですか?』
「奴を捕まえてウィルスの発動を止めさせる!」
『彼が止めてくれるとは思えませんが』

ルークは叫んだ。
「出来る事は何でもしたいんだ!」
『あなたの役目はミオの傍にいる事です』
ルークは言葉に詰まり室内は静寂に包まれた。

キリが周囲を見渡した。
「じゃ、じゃあ…。ミオは横になって。ルークは手を繋いでいて。リョウ。私達もやるよ」
「お、おう」

ミオはルークに助けられながら寝台に横になり、ルークが傍らに佇んだ。両手でミオの手を包んで額に当てた。キリとリョウはコンピュータホログラムを立ち上げてイヴに加勢した。

キリの夫のタカオは扉に向かった。
「村長に言ってくる」
アリスはエリカと顔を見合わせた。自分達は一体何をすれば良いのだろう。

アリスは宙空を見上げた。
「イヴ。何かする事はない?」
『ありません』
「そ、そんな…。私達も手伝いたいよ』

イヴは無言で無表情になった。ミオのウィルスに集中している。アリスに用はないのだ。アリスは黙って考えていた。ある事が閃き、エリカの腕を引っ張ってリペア室を出た。

「エリカ。私に考えがある。部屋に行こう」
アリスは自信を持って歩いていく。2人の共有の部屋に入ると振り向いた。
「リツに電話をする」

エリカは不思議そうな顔をした。
「何で?」
「リツはハッカーのアライブ…カガミソウタさんと仲良くなった。ソウタさんに頼む」

カガミソウタは優秀なハッカーでスオウトシキとの交渉にプランAをイヴと共に計画し実行し成功した男だ。アリスの恋人のリツと4日前に友人になった。リツからソウタに頼むのだ。

エリカは眉根を寄せた。
「何を頼むの?」
「ゲンを見つけてもらう。イヴは無理だって言ったけど、何もしないではいられない」

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