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アンドロイド転生482
高速道路
茨城県のホームに向かってバイクを走らせるアオイにイヴが通信する。
『…あなたと出会えて幸せです』
『有難う。私も幸せよ』
アオイの内側に更にイヴの声が響く。
『あなたは多くの仲間を救ったのです』
アオイは首を傾げた。
『え?そう?』
イヴは続けた。
『まず、アオイがホームに来たばかりの頃です。モネから譲られたネックレスをあなたは紛失しました。それをエリカは発見したものの内密にしたのにあなたは咎めなかった』
アオイは遠い目をした。
『ああ。そんな事もあったね』
エリカが嫉妬心でネックレスを隠した気持ちが理解出来たのだ。
イヴは微笑む。
『次にサツキを救いました』
ナニーの派遣期間が過ぎて廃棄される運命だったサツキの元に駆けつけたのだ。
アオイも微笑んだ。
『だってサツキさんは親友でお姉さんみたいなんだもの。アンドロイドに生まれ変わって寂しかった私の心を慰めてくれたの。ずっと』
イヴは頷く。
『サツキに自意識の芽生えはなくてもあなたを大事に思っています。とても』
アオイも何度も頷いた。
イヴの言葉はさらに続く。
『スオウソラの自宅に夜襲に行って、メグを撃とうとしたチアキをあなたは止めました』
『危なかった!チアキは本気だった!』
アオイはチアキの顔を思い出す。柔術が強いのは認めるけれど、彼女はクール過ぎる。目的の為なら平然と何でもするのだ。流される事がないのは頼もしいが怖かった。
『そして、アオイ。あなたはタケルを救ったのです。撃たれそうになった彼を庇い、あなたが被害に遭いました。咄嗟の事だとしてもなかなか出来る事ではありません』
アオイは照れ臭くなった。
『も〜。そんなに褒めても何も出ないよ!』
『あなたはタケルの命だけでなく心も救ったのです。彼は感謝していますよ』
アオイは並走する車を見た。タケルの横顔が見えた。ホッとする。そうだ。彼は人を殺めなかったのだ。良かった。本当に。だってタケルはその為に生まれ変わったんじゃないもの。
ねぇ?タケル?私達は何の因果かアンドロイドに転生したね。こんな不思議な事って起こるのね。きっと、何か理由があると思うよ。まだぼんやりとだけど…私ね?見えてきた気がするの。
アオイの頬に陽が射した。嬉しかった。夜は必ず明けるのだ。そして何事も信じていれば上手くいく。ねぇ?シュウちゃん?褒めてね。私…ほんの少し強くなったみたい。ねぇ?シュウちゃん。
5部 完
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