アンドロイド転生598
白水村の集落:キッチン
アオイとサツキは餃子を作っていた。人間達の大人も子供も皆で夕食の支度をしている。楽しげな騒めきに包まれていた。そこにリョウがやって来た。キッチン内をウロウロとしている。
「あ、あのさ。アオイ…。それと…サツキ。ちょっとリペア室に…来てくれないかな」
「どうして?」
「…メ、メンテをしようかと…」
アオイとサツキは顔を見合わせた。本格的なメンテナンスは年に1度だ。だがアオイはスオウトシキとの戦いで胸を銃で撃たれ、半月程前に修復したばかりでメンテナンスも実施した。
リョウは唇を舐めた。
「俺さ…アンドロイドの内部構造の研究をしているだろ…?協力してくれないかな?アオイの出身はTEラボだしサツキはランドラボ…」
リョウの額から汗が滲む。緊張していた。
「ラボが違うと…内部構造もちょっと違うんだ。だ…だから比較の為に中身を調べたいんだ」
「それはメンテとは言わないんじゃない?」
話しているうちに辻褄が合わなくなって来た。
「あ、あ…そうだな。え、えーと。じ、実はキリに内緒なんだよ!キリにはメンテって言って…本当は中身を…かく、確認したいんだ」
アオイは分かったと言わんばかりに頷いた。リョウの研究の熱心さを知っているのだ。
「じゃあ。夕ご飯が終わってからね。子供達のお世話があるから」
リョウは慌てて首を振った。
「い、今。直ぐにいいかな。研究の成果を早く確かめたいんだ。な?頼むよ」
アオイとサツキは再度顔を見合わせた。
「そんなに急ぐの?」
「う、うん。善は急げって言うだろ?コンピュータの世界はスピードが肝心なんだよ」
「うん…わかった。じゃあ行こう」
リョウはホッとして歩き出した。2人がちゃんとついて来るか。誰かに呼び止められないかと不安になって何度も振り返った。視線を感じて見渡すとエリカと目が合った。笑っている。くそっ。
リペア室にやって来ると、リョウは緊張のあまりに椅子に座り込んだ。暫く呆然となった。
「どうしたの?始めないの…?」
リョウはハッと気づき、慌てて立ち上がった。
「あ、あ。ごめん。じゃあ…寝てくれ」
アオイとサツキは2つある寝台に其々横になった。リョウは2人の頸の電源ボタンを押す。電源が落ちアオイ達は無になった。
リョウは深く溜息をついた。よし。これでオッケーだ。エリカが良いというまで2人には眠ってもらう。問題はキリに何と言うかだ。リョウはリペア室の明かりを消すと部屋を出た。
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