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アンドロイド転生812

2118年7月3日 午後10時 
東京都内某所:住宅街

「すみません。公園で子供が泣いています。迷子か…怪我か…。何故かナニーが見当たりません。一緒に探して頂けませんか」
アンドロイドのゲンは心配そうな顔をした。

ピザの宅配を済ませて建物から出て来た男性アンドロイドは自転車に跨ったが慌てて降りて頷いた。ゲンが歩き出すと着いて行く。ふたりは人気のない公園にやって来た。

ゲンは公園の下調べしていた。広くて入り組んでおり植樹が多くて大きな池もある。美しいが夜は閑散としていた。密やかな行動には適した場所だ。ゲンは振り向くと彼を見て微笑んだ。

「お名前を伺っても宜しいですか」
「何故ですか?」
「友達になりたいからです」
「分かりました。ゴロウです」

「ゴロウさん。仕事は楽しいですか」
「はい。満足です。ところで…どこに子供がいるのでしょうか。私には泣き声が聞こえません」
「あなたが泣くかもしれませんね?」

ゲンはエムウェイブを取り出した。掌に納まる銀のペンタイプの機器。スイッチを押すと先端から電磁波が照射され即座にアンドロイドは機能不全となって倒れるらしい。

TEラボは制御装置を造り出した。4ヶ月程前に新宿でアンドロイドが乱闘し多くの人間が犠牲になった。何としてもマシンをコントロールせねばならないのだ。人間の意地に賭けて。

ゲンはTEラボの研究員を騙してエムウェイブを手に入れた。その成果を試す為に今ここに居る。マシンを機能不全に出来るなら自分は無敵だ。全ての頂点に立ってやる。

ゴロウは表情を変えない。
「泣く?どういう意味ですか?」
ゲンはエムウェイブをゴロウに向けて照射した。彼は直ぐに崩れ落ちた。

ゲンは驚く。何とまぁ…呆気のないことよ。ゴロウに近付いて見下ろした。彼は身体の自由を奪われてうつ伏せになっていたが何とか首を動かしてゲンを見上げた。表情に疑問が浮かんでいた。

「何が起こったのでしょうか。何故か身体の自由が効かなくなりました」
「そうですか」
「店にSOSを送ります」

SOSなんて送られてたまるか。ゲンはしゃがみ込むとゴロウの頸に無線ケーブルを挿した。直ぐにゴロウのメモリに侵入して制圧する。
「何をするのですか?」

ゲンはニッコリとした。
「あなたの所在は不明になりました。ピザ店のAIはGPSで探れません。そしてゴロウさん。あなたもSOSは送れません」

ゴロウは不思議そうな顔をした。
「何故?どうしてそんな事をするのですか?」
「だってこれからあなたは死ぬのですから」
ゴロウは目を見張った。

ゲンは残酷な笑みを浮かべた。
「あなたはピザ店のアンドロイドですが、私は戦士です。相手を叩きのめすのが使命です」
ゲンはゴロウの腕を掴んで渾身の力で捻った。

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