見出し画像

アンドロイド転生539

茨城県白水村の集落:ダイニングルーム

夕食後の席。満ち足りて賑やかなざわめき。60人の人間とアンドロイドが席に着いていた。村長のドウガミサトシが立ち上がった。
「みんな、聞いてくれ」

サトシの険しい顔に賑やかだった室内が徐々に静まった。皆、怪訝な顔をしながらサトシに注目をした。サトシは静かに一同を見渡した。
「今日は大人になったミオのお披露目だった」

全員がそうだと言わんばかりに大きく頷いた。誰もが彼女の登場を楽しみにしていた。
「残念ながら、それは叶わなくなった」
人々は顔を見合わせ、口々に疑問を呈する。

「ミオは今…戦っている。いや、正確にはイヴ達だが。実はミオのメモリにウィルスが落とされてな。まだ解凍されていないがタイムリミットは…あと39時間しかない」

誰しもが息を呑んだ。目を丸くする者。手を口に当てる者。立ち上がる者もいた。
「な、なんでそんな事になったの⁈」
「誰がやったの?」

「解凍されたら…どうなるんだ?」
サトシは重々しく首を横に振った。
「どうなるか…分からん」
一同は顔を見合わせ、不安と怒りの声を上げた。

サトシは手を上げて人々を制した。子供達はクラブ夢幻のミオの戦闘を知らない。言うわけにはいかない。だがミオの今の状況は子供だって知るべきだ。家族なのだから。

だから子供にも分かるように説明をする。
「皆んな風邪を引くだろう?重い時だってあるな?ミオはよそのアンドロイドに移されたんだ。かなり厄介な風邪なんだ」

アオイの隣に座っていた少女がアオイの服を引っ張った。見上げて不安そうな顔をする。
「ミオちゃん…大丈夫…?」
「大丈夫よ。大丈夫」

アオイも不安で一杯だったが、希望があると思わせたい。少女の母親もアオイを見つめた。アオイは力強く母娘に頷いた。
「だって、イヴ達がいるもの…!」

アオイも夕方にミオの状況を知らされた。ショックだった。ミオの気持ちを考えると可哀想でならない。共に話を聞いたタケルは憤慨し、アリスと共に東京に行ってしまった。

ウィルスを仕込んだアンドロイドのゲンを追ったリツは逮捕されてしまったが、無実が証明され自宅に戻ったようだ。アリスは暫くリツの元にいる事になった。2人は恋人同士だ。

今はタケルがヒカリのマンションに訪れ、ゲンを捕えようと画策しているらしい。果たして上手くいくのだろうか。私は何をすれば良い…?ミオを救う為に協力がしたかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?