アンドロイド転生297
2119年2月8日 夜
カノミドウ邸:書斎
非合法で手に入れた銃のコレクションの前で孫のタカヤは美しいと言って目を輝かせた。
「こんな物が美しいだと…?」
シュウは呆れた。
タカヤは開き直って一丁の銃を掴んだ。
「これなんて、なかなか市場には出回らないんだ。このフォルム。光沢。素晴らしい」
酔っているかのように瞳が爛々とする。
父親のタクミは立ち竦むとやがてどさりとソファに腰を下ろした。若々しいが彼もシュウと同様に老齢なのだ。表情に怒りが現れた。
「今すぐに手放せ」
タカヤは首を横に振った。
「い、嫌だ」
「ふざけるな!ここは日本なんだぞ。銃など持っているなんて犯罪だ」
トウマは父親の別の一面を見て驚いていた。有能で頼もしい父親が銃のコレクター。こんな事が公になったらカノミドウ製薬はどうなるのか。人の命を守る家業に深い傷がつくだろう。
トウマはもうひとつの罪を追求する。
「ダイヤは…?20個もあるって本当?」
タカヤは目を丸くする
「何で知ってるんだ?」
シュウは溜息をついた。
「脱税でもしているのか?それとも裏金でも手に入れたか?一体何をしている⁈」
「利益の計上を誤魔化した…」
シュウは呆れた顔をした。
「いつからだ?」
「3年位前から…」
また溜息をつく。なんて馬鹿な事をしたのだ…。
カノミドウ製薬は老舗の大企業だ。しかもアンドロイドの皮膚化学の研究を経てノーベル生理学賞を受賞した。2040年の第二次関東大震災で日本経済は破綻したが起死回生を図り経済復活に寄与した。
シュウにとってそれは自負と共に自慢でもあった。社会に貢献した清廉潔白な優良企業であると。未来永劫続くのだと。ところが、代表者のタカヤが後ろ暗い罪を抱えているとなると話は違う。
収支を偽った上に金品を得て、更に銃刀法違反とは…。この事が公になれば、カノミドウ製薬は終わる。300年以上続いた歴史は消えるのだ。シュウは額に手を当て更に深い溜息をついた。
息子のタクミは慌てたようにシュウを見た。
「父さん、これは内密に処理しよう」
「内密になど出来るものか」
「今までもバレないんだ。これからも大丈夫さ」
タクミはタカヤを見上げた。
「この事は誰が知っている?」
「秘書だけだ。役員達は誰も知らない」
秘書はアンドロイドである。
タクミは瞳を輝かせた。
「そうか…!いいぞ。秘書を廃棄処分しろ」
「う、うん」
「データも全て消すんだ」
トウマは目を見開いた。
「アンドロイド…。そうだ!他にもいるんだぞ!この事を知ってるアンドロイドが!」
そう。アオイ達である。
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