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アンドロイド転生671

白水村:会議室

滅亡派と存続派は少しもお互いに歩み寄る事なく意見をぶつけていた。だが今日は初日である。この先の議論で心は変わるかもしれない。それで良い。だからこその話し合いなのだ。

エリカは議長としての責務を果たす。
「纏めますと…滅亡派はこの先…子供を儲けるという選択はないと言う事ですね。遺伝子の偏りで弊害が生まれる可能性があるからです」

エリカは周囲を見渡した。
「つまり、今の子供達をもって…0歳の赤子を最後にホームは終わると言う事ですね」
ケンジともう1人の代表者が頷いた。

「存続派は、国民として所属し子供達に新しい出会いを儲けさせて未来に繋げると言う事ですね?宜しいですね?」
キヨシとルイの父親のタカオは頷いた。

エリカは村長達を見た。
「中立派はどちらでも良いと思っている訳ではなくどちらにも決められないという事ですね?」
村長と代表者は頷いた。

滅亡派のケンジは立ち上がった。
「良いか?新しい出会いを儲けて子供を作ったとしても平家の血が濃くて色素が薄いかもしれん。そうなったらタウンの人間は迫害するぞ」

タカオはサクラコを思い出して暗い気持ちになった。彼女はルイの赤毛と銀の瞳を否定した。妻の青い瞳も認めなかった。結局、サクラコの思い通りになり小さな恋は終わったのだ。

ケンジは腹の底から声を出す。
「そもそも今うちにいる子供達の多くは皆んな色が違う。そんな子供が街に行って受け入れられると思うか?あんたは甘いんだ」

存続派のキヨシも立ち上がった。
「受け入れられるかどうか、試してみないと分からない。江戸時代を見てみろ。鎖国していた日本は外国人を受け入れたんだぞ」

タカオも頷いた。
「そうですね。そうやって文明が開花したんです。何事も始めてみないと分かりません」
そうだ。ルイを受け入れてくれる人は必ずいる!

それから2時間。互いの意見は対立し、歩み寄る事はなかった。全員が疲労を感じて会議を終え、やれやれと退出した。本当に纏まるのだろうかとエリカは呆れて溜息をついた。

元大臣秘書のケイがそれに気付いて笑った。
「大臣達の議論だってそんなもんさ。意見は対立するものなんだ。ポリシーがあるからな」
「ああ。面倒臭い」

エリカは眉間に皺を寄せた。
「最終的には決を取るんでしょ?賛成多数で決まるんでしょ?」
「どうかなぁ…。納得しないで出ていくかも」

エリカは成程と頷いた。そうなったら自分はどうするのだろうか。滅亡派についていけば、あと100年もすればホームは終わるのだ。存続派ならば…。まぁ、私はタケルについていこう。

タケルに恋愛感情はないと宣言されて涙を零したもののエリカは諦めていなかった。タケルと知り合ってまだたったの8年。我々には半永久的な時間があるのだ。そう、いくらでも。

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