アンドロイド転生309
新宿区歌舞伎町:クラブ夢幻
クラブの地下にやって来たスオウマサヤ。2体のアンドロイドをスパイに決めた。これでTEラボの職員を探ってうちの資産を奪った犯人を見つけるのだ。満足げに椅子にドカリと腰を下ろした。
マサヤは舎弟のミヤザワの出したウィスキーを飲みながらつらつらと考えていた。常日頃から思っていた。何故アンドロイドには殺人や人間に対する暴力行為が出来ないのかと。
アンドロイド同士なら機能停止する迄戦う能力はあるのだ。だから邪魔な人間などぶち殺してしまえばいいと思う。ある日エックスラボの担当者に疑問を呈した。女性職員は顔を引き締めた。
『万が一アンドロイドが暴走した時に人間を襲うかもしれません。そうならない為にマシンには禁止機構があり、警告音が彼らの内側で鳴ります。マシンにとって不快な音です』
マサヤは小首を振った。でも俺は禁止機構は外せると思ってる。世の中じゃ、あちこちで戦争が起きてるんだ。殺人兵器は絶対にいる筈だ。世界が発表していないだけだ。
マサヤは更に疑問をぶつけた。
『じゃあよ?もし俺を襲ってきた人間がいたらどうするんだ?俺を守る為にそいつを殺さねぇのか?暴力をしねえのか?』
職員は自信ありげに応えた。
『自分の身を犠牲にしてあなたを守ります』
『へぇ?マジかよ?そこで俺を守る為に人間をやっつけるんだな?』
職員は首を横に振った。
『暴力は振るえません』
『いや、例えばよ?例えば振るったら?』
『有り得ません』
彼女の自信がマサヤは不満だった。
『じゃあよ?俺がマシンに命令したら?敵を殺せって。人間をやっつけろって』
『出来ません』
マサヤは憤った。
『主人の命令だぞ?』
『その場合、命令と禁止機構に挟まれて機能停止になります。人間に喩えるなら死ですね』
女性職員は断固としてアンドロイドの暴力を認めなかった。確固たる自信で応えた。彼はそのうち諦めた。まぁ…平和な日本にはまず暴力だ、殺人だなんてないしな。組の抗争なんてのも昔話だ。
でも…親父はどうするつもりなんだ?TEラボの不正職員が見つかったら…。そいつをぶち殺すのか?親父が?いや…マシンにやらせる?それは楽しい。やらせてみよう。マサヤはニヤリと笑った。
マサヤはアランとローガンに命令を下した。彼らは無表情だった。製造されてから今まで笑った事などない。自分の存在意義は戦うこと。そして主人の命令に従うこと。
2体は早速、頸のソケットにケーブルを挿しTEラボにアクセスをして全職員のメールと通話と個人情報をスキャンした。これで不正者を炙り出すつもりである。直ぐに暴くだろう。マサヤは満足だった。
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