アンドロイド転生663
2118年3月22日 AM2:00
白水村:リペア室
タケルの想像通り、深夜2時でもリョウはリペア室で作業していた。最近はアンドロイドの心臓アクチュエーターの研究に没頭している。テクノロジーは彼の得意分野であり生き甲斐だった。
スマートリングが鳴った。タケルだった。リョウの顔が強張り、心臓が早鐘を打った。な、なんでタケルが連絡をして来るんだ?まさかエマを陥れた事がバレたのか?俺がやったって…?
逃げたい。でも確かめたい。心が揺れた。逡巡した挙句応答した。宙空にタケルが浮かんだ。
『起きていたか。実は…頼みたい事があるんだ』
「よ、よぉ…。な、なに…?」
タケルは難しい顔で告げた。現在、都内におり恋人のハスミエマの家に滞在していると。彼女は悪意のある誰かにホームページを改竄され、プライベートな動画まで流出されたと。
リョウは何度も唇を舐めた。額から汗が滲んでくる。それらは全て自分がやったのだ。悪意のある誰かは俺だ…。リョウはやっとの事で答えた。
「ひ、酷ぇな…」
タケルは神妙な顔をして頷いた。
『頼む。調べてくれ』
リョウは気付かれないように息を吐く。どうやら俺だとバレていないらしい。
リペア室の扉がスライドした。エリカだった。リョウは彼女を見て目を丸くした。慌てて手を上げて静止するように合図した。エリカは立ち止まり立体画像のタケルを見つめた。
タケルはエリカに気付かない。
『急いで犯人を見つけたい。出来るか?』
「う、うん。お、俺よりもスキルが上かもしれないけど…。な、何とか探してみるよ」
タケルは少し表情を和らげた。
『有難う。じゃあ、宜しく頼むな』
「お、おう…!」
タケルの立体画像が消えた。
エリカは腕を組み、鼻で笑う。
「実はリョウが犯人でした…って知ったらどうするかしらね〜」
「お前が犯人じゃねえか!」
リョウはエリカの顔など見たくなかった。
「何しに来たんだよ!」
「最終仕上げ。オクザワヒカリのゴーストを暴露するよ。エマの名前で。さぁ直ぐにやって」
リョウは眉間に皺を寄せた。
「お前よぉ…いい加減にしろよ。もう充分だろ?これ以上はやめろ。俺はやりたくねぇよ」
「あっそう…!」
エリカはケイにコールする。
「サキの事で話したいんだけど」
サキとはケイの恋人で、リョウの片想いの相手だ。あろう事かリョウはサキの裸を盗撮した。
リョウは目を剥いて立ち上がった。
「やめろ!」
「あ。ケイ、ごめん。私の勘違いだった」
通話を切るとエリカはニヤリとした。
「さ。リョウ、早く仕上げをして。あ、それからタケルには犯人はスキルが上だった。分からなかったって言うんだよ?オッケー?」
リョウは力なく頷いた。
※リョウがエリカに初めて脅迫されたシーンです
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