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アンドロイド転生1006

2119年12月18日 
イギリスロンドン某所 公園にて

「リョウ?あのね…話したいことがあるの」
「うん?」
ミアは唇を舐めると顔を上げた。
「わ…私達…このままどうなるの?」

リョウは質問の意図がよく分かった。日本に帰るのか。それともイギリスにいるのか。この先はどうするのか。自分の1年や2年。何なら5年だってどうでも良いがミアにとっては重要だ。

リョウは真剣な顔になった。2人は晴れて恋人同士となり結ばれた。気が付いたらイギリスで暮らしてもう1年半だ。ミアと離れたくなくてここにいる。毎日が本当に幸せだ。

リョウは1年前を思い出した。滞在が半年を過ぎた頃、イギリス政府から連絡が来たのだ。強制退去されるのかと驚いたが相手は好意的だった。観光期間を終えたのでビザの申請が必要だと言う。

担当者は語った。イギリスにもワーキングホリデーという制度があり最大2年間は滞在出来るのだが年齢は18歳〜30歳迄である。35歳のリョウは適用外であった。成程と思った。

直ぐに手続きをする事になり就労ビザかパートナービザかと問われ、パートナービザで申請をして難なく受理された。このまま4年イギリスに住めば永住権を取得出来るそうだ。

しかしそうは容易くない。日常的な英語力は必須だしLife in the UKと言うイギリス政府のテストに合格せねばならない。以前は簡単だったらしいが今はかなり難易度が高いようだ。

リョウは口を真一文字にして頷いた。
「俺は…永住権を取ってイギリスで暮らしたい。仕事も順調だし、何とかやっていける。英語も勉強しているしテストも必ず合格するよ」

仕事はマッチングアプリを運営している。英会話も上達した。渡英当初は一言も喋れなかったが元来知能が高いのだ。瞬く間に吸収していた。テストも受かる自信があった。

「ホント?日本に帰りたくないの?」
「全然」
「お父さんとお母さんに会いたくないの?」
「もう36になるんだ。甘えたい歳じゃない」

リョウは日本には特に思い入れがなかった。ホームでは山で四季を見つめて暮らすだけ。しかも殆どリペア室で過ごしコンピュータに明け暮れる。交流するのは両親とキリとタカオのみ。

国民になって都内にマンションを用意されたものの1日も居住する事なく渡英した。東京というものをリョウは知らないのだ。1年半暮したイギリスの方が遥かに親しみがあった。

ミアは上目遣いになった。
「じゃ…じゃあさ?あ、あのさ…?私とこのままずっと付き合っていくの…?」
「ミアが嫌じゃなければ…」

ミアは目を剥いた。
「嫌じゃない!嫌なわけない!大好きなの!」
リョウは感激する。こんなに可愛くて性格の良い子が自分を好いてくれるなんて夢のようだ。

リョウはミアの頭を撫でた。一回りも離れているのだ。何だか時々兄のような気持ちになる。
「俺もミアが大好きだ。ホントにホントだ」
「oh!リョウ!Love you!!」

ミアが抱きついてきた。花のような香りが鼻腔をくすぐる。ミアはいつも良い匂いがするとリョウは思う。ああ。俺は幸せ者だ。
「俺も愛してる」

ミアが耳元で囁いた。
「じゃあさ?私達…結婚する…?」
リョウは驚いた。け、結婚?俺とミアが?まるで感電したような気持ちになった。

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