![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141430339/rectangle_large_type_2_da6640123d3af21312a91c92b8f854a8.png?width=800)
アンドロイド転生905
(回想)
2118年10月26日 午後
葛飾区:カガミ邸のコンピュータルーム
(ソウタの視点)
ソウタ達はスオウらの会話を聞いていた。スオウ組のAIはイヴの妹分になったのだ。全て筒抜けだ。ソウタはリツに向かって頷いた。よし。頃合いは良いだろう。
「スオウ組にアクセスする」
「うん」
リツも真剣な表情だった。やっとやっとここまで来た。後はソウタの交渉次第だ。
「こんにちは。スオウさん。取引データを持っている、カガミソウタと申します。ゲンは都内にいますね。人間の女の家です。ヤツはエロマシンになって女とヤリまくってますよ」
(スオウの視点)
スオウとトミナガは天を仰いで驚いた。突然部屋中に男の声が響き渡ったのだ。直ぐに2人は理解する。AIを手中に収めたのだろうと。スオウは舌打ちをした。上には上がいるものだ。
カガミソウタと名乗った男の声は続く。
『僕の顔を見たければ執事を呼んで下さい。彼が媒介者になるでしょう』
正体を現すと言うのか。随分な自信だ。
スオウはトミナガに向かって頷いた。よし。見てやろう。どんな輩だ。トミナガが執事を呼んだ。執事が掌を上に向けると宙空に映像が作られた。男の顔が浮かび上がった。
ソウタは微笑んで丁寧に頭を下げた。
『宜しくお願い致します』
スオウもトミナガも憮然とした表情だ。見知らぬ男だ。この野郎は何なのだ?
ソウタは顔を上げるとニッコリとした。
『僕はあなたとお会いするのは初めてですが、今年の3月に色々とさせて貰いました。イタリアと中国の爆弾取引ではお世話をしました』
スオウは目を見張った。
「な、なんだと…?」
『仲介者になってたんまり稼いだでしょう?またお世話するなんて因縁がありますね』
一転してソウタは残念そうな顔をした。
『僕はそれなりにコンピュータ技術があってね?色んな事が出来るんだけど、マシンの契約者譲渡の操作は出来なくて…』
ソウタは唇を舐めた。
『契約者が変更になると所有者のラボからマシンに信号が送られるらしいんだ。そうすればゲンは僕を主人だと認識するようになるんだ』
そう。ゲンの現在の主人はスオウなのである。スオウとゲンの間にだけ主従関係が発生するのだ。だが彼はついさっきまでゲンが逃亡した事を知らなかった。考えもしなかった。
今年の3月のクラブ夢幻の戦闘でアンドロイドは全て機能停止となって警察に押収されたと思っていたのだ。それがこっそりと逃げ出してどうやら人間の家に転がり込んでいるらしい。
スオウはじっとソウタを見つめた。
「何故主人(契約者)になりたいんだ?」
『復讐したいんだ。僕の彼女がゲンに殺されたんだよ。だからヤツを倒したい』
スオウは目を見開く。
「お前の彼女?」
『うん』
「マシンに人は殺せないぞ」
そう。スオウは目の前で確認した。執事のヒロトにトミナガを殺れと命令したがヒロトは命令と禁止機構の狭間で壊れた。機能停止になったのだ。何があってもマシンに殺人は出来ない。
スオウはソウタの恋人が人間だと思い込んだ。彼にとってアンドロイドはただの便利なツールに過ぎない。携帯電話と同じだ。マシンと人間が恋をするなんて考えもしなかったのだ。
※ヒロトが機能停止になったシーンです
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?