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アンドロイド転生570
2119年3月18日 午後2時過ぎ
東京都目黒区:エマの住居
広々とした浴室でタケルはエマの髪を洗っていた。エマは4、5人も入れる程の大きな浴槽に浸かり頭を淵から出している。裸は困るとタケルは言ってエマに水着を着用させた。
エマの長い髪は沢山の泡に埋もれている。タケルは指の腹で優しくマッサージを施していた。微妙な力加減が大切なのだ。エマは微笑んで目を瞑っている。心地良さそうだ。
泡を落としトリートメントをする。花の香りが広がった。洗い流してタオルで髪を包んだ。
「はい。終わりました」
「有難う〜!気持ち良かった〜!」
エマはタオルを頭に巻いたまま、巨大なバスタブに身を沈めた。バブルが弾けている。
「タケルさんも入らない?」
「遠慮します」
浴室を出て行こうとするタケルを呼び止めた。
「ねぇ?タケルさんって誰とも付き合った事がないの?好きな人はいないの?」
「はい。いません」
「私の事は…好き?」
タケルは考えた。好き…とはどういう感情の事を言っているのだろう?友達?異性?家族?エマは妹の面影があり懐かしい気持ちになる。
「エマさんは…私の妹に似ています。私は生まれ変わったと言ったでしょう?覚えていますか」
「ああ。人間だったって話?凄いね。輪廻転生ってあるのねぇ。幾つで死んじゃったの?」
「私は17歳で妹は13歳でした。震災に巻き込まれたんです。エマさんを見ると妹が成長したらこんな感じなのかと思って感慨深いです」
「妹さんに似てるなんて嬉しいなぁ!」
タケルはエマが素直に信じていてくれる事も嬉しかった。この時代の人の鷹揚さなのか、エマの性格なのか。こんな奇想天外な話しを受け止めてくれる。絵空事だと馬鹿にしない。
エマは微笑んだ。
「今のタケルさんも素敵だけど人間の時もイケてたろうなぁ。なんかね?雰囲気あるもん」
タケルは褒められて悪い気はしなかった。
エマは閃いたと言わんばかりの顔をした。
「あ!ねぇ!これから出掛けない?バーに行くのは夜だし、まだ3時前でしょ?本当はフェスに行きたかったけど混んでるから近場で!」
エマは湯船から勢い良く立ち上がって頭のタオルを外した。浴室の隣の乾燥機ブースに飛び込む。一瞬で全身が乾く。タケルの手を引っ張って寝室に導いた。タケルは緊張する。
プレイ(性行為)をしようと言い出すかと焦ったがエマはさっさと服を着た。善は急げと言わんばかりだ。スポーティなスタイルで白の上下を着用した。細身の身体によく似合っていた。
「ドレスを買う!今日着ていく服!髪もセットするんだから、やっぱり服も合わせないと!」
近くにショッピングモールがあるらしい。全てエマの思うが儘だとタケルは苦笑した。
※タケルと家族が死んだシーンです
※タケルとエマが初めて出会ったシーンです
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