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アンドロイド転生721

2118年5月10日
白水村:里の出入り口

ミオが再度生まれ変わった3日後のこと。アオイはミオを抱き締めた。
「おめでとう。本当に良かった…」
「有難う…」

アオイはミオから離れると繁々と彼女を見上げた。長身で細身の新しいミオは前回と同様に25歳。18歳クラスのアオイより大人になってしまった。2ヶ月前までは14歳だったのに。

アオイは悪戯っぽく笑った。
「ミオ。何度も生まれ変わるだなんて…そんな事は滅多にないよ。私だって1回なのに」
「ホントだね…!」

「でも素敵だよ。ミオはいつだって綺麗で可愛いの。私よりも大人になったけどやっぱり妹なの。うん。双子のね。私の歴史を共有したんだから…!もう一心同体だね…!」

ミオは瞳を潤ませた。
「アオイ。過去を観せてくれて有難うね。ホントに嬉しかった。心強かった。お礼がしたいよ」
「そんなの良いの。幸せになってくれれば」

人間に憧れているミオはアオイと繋がり、アオイの前世の頃の想い出に触れた。幼児期、少女期、そして大人を体験した。そのひとつひとつがミオにとって宝物なのだ。

再度2人は抱き締めあって離れると、アオイは遠くの尾根を見つめて背筋を伸ばしリュックを担ぎ直した。これからホームを発つ。モネの元へ行くのだ。約束したのだ。必ず戻ると。

骨折したモネのリハビリのサポートをする。それが自分に課した役目だ。16歳のモネにナニーは必要ではないが今はそれで良い。その後は彼女が完治した時に考えようと思っていた。

親友のサツキが微笑んだ。
「モネ様に宜しくお伝え下さい」
「うん。モネ様が元気になったら、いつかハル様とナツ様に会おうね」

ハルとナツとはサツキのナニー時代の育て子だ。彼女はいつもその日を夢見ている。
「はい。楽しみにしています」
「じゃあ、行くね」

アオイはこれから山道を降り麓を目指す。車輌保管小屋でバイクを借りて東京へ行く。
「アオちゃ〜ん!バイバーイ!」
子供達がジャンプして手を振った。

アオイも笑顔で手を振った。
「行って来ます!」
その声を建物の陰から聞いている者がいた。ルイだった。彼は切ない思いでいっぱいだった。

アオイはモネの元へ行く。俺も行きたい。凄く行きたい。せめてもう一度だけでもモネと会いたかった。小さな恋が終わって1ヶ月と少し。心の傷はまだまだ癒えなかった。

アオイはリズミカルに山道を歩く。顔が自然に綻ぶ。嬉しくて堪らない。ミオは復活した。本当に良かった。心から安堵する。リョウはヒーローになった。思わず抱きついてしまった。

ヒーローと言えば…タケルはホームのヒーローだった。そんな彼は約1ヶ月前に出て行った。エリカに暴力を振るったらしい。一体何故だろう。彼は…今…どこに居るんだろう…。

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