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アンドロイド転生667

茨城県白水村集落:倉庫

エリカはルイを探した。人から聞いて倉庫で作業をしていると知った。倉庫を覗くとアンドロイドのルークと共にテーブルを直していた。
「ルイ!ちょっと来て!」

手袋を外しながらルイがやって来た。
「モネが話をしたいんだって」
ルイの顔が強張った。
「い、いいよ。話す事…ないから」

エリカは驚いて目を丸くした。
「え?え⁈どうしたの?」
「俺達…別れたんだ…」
「嘘!ほんとに?」

ルイはまた手袋を嵌めた。
「じゃ、仕事があるから。またモネから連絡が来てもほっといて。俺は話はないから」
エリカはゆっくりと頷いた。

エリカは部屋に戻りながら首を捻った。自分の知らないところで一体何が起こったのだろう…?だがよく考えてみて、これで全て自分の思う通りになったのだと気が付いた。

元々2人の仲を裂くのが目的だったのだ。憎いアオイが育てた子供のモネが苦しめばアオイも辛い。そしたら私は嬉しい。どんなに気分が晴れるだろうと常々思っていたのだ。

だからルイ達の恋路の橋渡しをした。何度も電話の媒介をして4回もこっそりとルイを都内に連れ出してモネと逢わせたのだ。2人の仲を盛り上がらせて落とす。それを計画していた。

だが盛り上がらせたところでモネとアオイが喜びの再会を果たしたのだ。全く悔しくてならない…!そう思っていたのに、実はそうではないらしい。エリカの口元が綻んだ。

エリカはモネにコールした。
「ルイが…話す事はないって言ってるよ…」
立体画像のモネの顔が強張り、大きな瞳が潤んできた。やがて涙がポロポロと零れ落ちた。

エリカは笑い出したいのを堪えた。
「喧嘩したの?」
『ル、ルイがね…。俺達はダメなんだって…。別れるって…。でも私は納得出来ないの…』

エリカは小首を傾げた。
「大人達に反対されたから?」
『分からない…。ねぇ?エリカ。ほ、本当にもうダメだと思う?ルイの心は変わらない?』

「アオイは何て言ってるの?」
モネはサヤカの名前が今はアオイだと本人から聞かされた。でも自分にとって彼女はサヤカだ。カーと言う愛称なのだ。

『カーは何も言わない。でも悲しんでいるみたい。ルイが別れるって言った時…カーが助けてくれたの…。泣いて良いんだよって言って…それから…私の側にずっといるって』

エリカの心が踊る。モネの苦悩の時に一緒だったのか!アオイの悲痛な顔を見たかった!どんなにか清々した事だろう!しかもモネの側にずっといる?ああ、いてくれ。2度とホームに帰って来るな。 

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