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アンドロイド転生450

青海埠頭

銃声が響く。アオイの胸を貫通する。タケルは起き上がる。振り返る。アオイがのけ反って倒れていくのを見た。片方の目を見開く。彼女の名を叫ぶ。立ち上がって駆け出す。

タケルはアオイを素早く抱き上げるとコンテナの陰に運んだ。エリカが後に続く。タケルはすぐさま埠頭に戻ると銃を放つ舎弟達の間を縫って次々と倒した。銃の嵐が止んだ。

トミナガはスオウとマサヤに駆け寄った。
「逃げて下さい!」
トミナガはクレハを見た。
「クレハさんも!早く!」

トミナガは3人の背を押すとコンテナの陰に誘導した。安全を確認すると直ぐにコンテナを背にして埠頭を伺い見た。舎弟らが倒れている。タケル達はいない。静寂な時が流れる。

だがトミナガの全身はアンドロイド達の気配を感じていた。どこだ…?どこにいる…?気を許したらマシンにやられる。彼の目が爛々とした。撃たれた肩の痛みなど忘れていた。

胸を射抜かれたアオイはコンテナの陰で仰臥していた。強靭なアンドロイドでも人間と同様に心臓部にダメージがあると機能に不都合が生じる。幸いにも中枢を逸れていた。

タケルが叫ぶ。
「アオイ!大丈夫か?」
アオイはタケルに顔を向けた。
「うん。…アンドロイドって凄いね」

アオイは起き上がると自分の胸を見下ろした。服に穴が空いており、細く白い煙が立ち昇っていた。人間ならば即死だろうに、痛みも苦しみもない。ある意味感心していた。

タケルは眉間に皺を寄せた。
「何で俺を庇った?」
アオイは薄く笑った。
「何でかなぁ…?身体が動いちゃったの」

タケルは瞬きして驚いたような顔をした。
「なんかお前の動きが早いぞ?どうした?」
「分かんない。時間がゆっくり進んだの」
「鈍臭いと思ってたのに」

アオイは苦笑した。
「そ、そうよね。人間の時もアンドロイドになってからも運動は苦手なのに…」
「兎も角、助けてくれて…感謝する」

アオイは少し驚いた。タケルが素直に礼を述べるとは思わなかった。アオイはタケルとエリカを交互に見た。タケルは胸と太腿を撃たれ、眼球を失くし、エリカは頭髪が燃え、顔が真っ黒だ。

「あなたも撃たれて…大丈夫なの?目も…片方なくなってるし…。エリカは髪が…。皆んなボロボロじゃない…。戦いって虚しいね。ねぇ?もう終わりにしようよ。やめようよ。お願いだからやめて」

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