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アンドロイド転生752

白水村集落:中庭

「ミオが…死んだって…。明日葬式するって」
ルイの言葉にカナタとシオンが目を見開いた。
「母ちゃんが言ったんだ。で、小さい子にはミオは風邪を拗らせたんだって言えって」

少年達はミオの問題行動の原因は知らない。キリは子供らに言えなかった。他のアンドロイドにウィルスを仕込まれたのだとは。単にミオのメモリに不具合があると報告していた。

カナタは眉間に皺を寄せた。
「そうか…。ダメだったんだ…キリおばさんにも直せない事があるんだよな」
ルイは悔しそうに頷いた。

少年達から見ればリペア室の3人とイヴはアンドロイドの神様のようなものなのだ。だが彼らにも不可能な事があるのだと改めて思い知った。トワも助けられなかったのだ。

シオンの心も痛んだ。ミオは彼にとってずっと姉のようだった。深々と溜息をついた。
「トワも死んでミオも死んだ。エリカもタケルも出て行った。アオイ達は帰って来ない…」

キリはエリカも機能停止したと伝えていない。自分が制裁を下したのだとはとても言えなかったのだ。それにエリカの罪の数々を知らない方が良い。アンドロイドの心の闇など。

少年達はエリカはタケルを追って街に行ったと信じている。ルイが遠くの尾根を眺めた。
「エリカよぉ…。タケルに会えたかなぁ。会えるといいよなぁ…あんなに惚れてたんだから」

カナタは頷いた。
「そしてよぉ…俺らも…そのうちタウンに行くだろ?ホームはホントに少なくなるな。また新しいアンドロイドを仲間にすんのかな…?」

ルイは首を横に振った。
「しないと思う。130年もすればホームはなくなるんだ。マシンだって困るだろ」
「あ、そっか」

シオンは頷いた。
「サキ姉ちゃんもタウンで暮らすだろ?ケイも一緒に行くんだって。そうやってマシンも自分の未来を考えるんだよ」

サキはシオンの従姉妹だ。彼女は31歳。中立派だったがアンドロイドのケイと共に旅立つ。一生ケイと添い遂げるつもりなので平家の血を繋げる事は出来ないが村にいるのは嫌なのだそうだ。

シオンはサキが村を毛嫌いしているのがよく分かった。自分だってそうだ。山に囲まれ四季を見つめて暮らすだけ。取り立てて変化もなく概ね平凡な毎日。飽き飽きするのがよく分かる。

シオンは早くタウンに行きたかった。ミオの問題で国民登録の件が休止していたが、漸く片付いた事で事態は変わっていくだろうとホッとする。そう思ったところでシオンは慌ててた。

あ、別に僕はミオが死んでしまったから安心してるんじゃないからな。いなくなったのは寂しいし可哀想だと思ってる。ミオ…天国で楽しく暮らせよな。そして僕を見守ってくれよな。

シオンは冷めているわけではない。ただ好奇心が旺盛なのだ。街に出たい…。そんな自分の欲求に勝てないのだ。それこそが若さと言える。そして絶対に運命の女神の前髪を離さない。

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