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アンドロイド転生336

茨城県白水村:タケルとルークの部屋

深夜。ルークはタケルに声を掛けた。
「話がある」
「なんだ」
「アンドロイドの事だ」

タケルはルークを見やった。ルークは続ける。
「新しく造られた10体は戦闘用だが…スオウのアンドロイドとは互角だろう」
「そうか?楽勝じゃないか?」

クラブ夢幻にいるアンドロイドは戦士だが、スオウの屋敷のアンドロイドはただの守衛だ。だからこそ1年前に盗みを働いた時は容易く倒せたのだ。タケルは今回もそうだろうと楽観視していた。
 
ルークは首を横に振った。
「スオウは学んだ筈だ。今はきっと屋敷の守備も万全だ。簡単にやられる相手ではないと思う」
「そうか」

「あと…スオウにはマサヤと言う息子がいる。俺が13年前にクラブにいた頃は子供だったが今では多分2代目だ。人間は血筋を優先するだろう?」
「だな」

タケルはゆっくりと頷いた。
「息子も倒す必要があるな」
「そうだ。スオウもマサヤも倒さない限り、ホームは危険に晒される。非常にまずい」

ルークはタケルをじっと見つめた。
「キリは俺達を家族だと言って10体だけで戦おうとしているが…マシンに人間は攻撃出来ない。つまり…タケル…お前が必要だ」

「分かってる。俺も行くつもりだ」
「お前は本当に人間をヤレるのか?」
タケルは黙った。どうなんだろう?心は人間だと思う。だから禁止機構は働かない…筈…だ。

ルークの言葉が続く。
「スオウは冷酷な男だ。必ず復讐するだろう。だがお前が人間の心を宿しているとは言え、本当に殺人が出来るのか?倫理に反さないのか?」

漸くタケルが口を開いた。
「俺は1度死んだ。そして2度目の死を迎えるところだった。TEラボで廃棄される筈だった。でもキリ達に助けられた。その恩に報いたいんだ」

ルークにはその気持ちが理解出来る。自分も同じだ。廃棄を覚悟していたところ救われた。
「そうだな。俺も恩に報いるぞ。俺も行く」
「うん」

タケルの瞳が決意に燃えた。
「それに…トワが死んだ。アイツは弟みたいだった。アイツが1番最初に俺に家族だと言ってくれたんだ。アンドロイドにそんな気持ちがあるなんて驚いた。でも嬉しかったよ」

ルークの瞳に悲しみの色が浮かんだ。
「そうだな…」
トワを守れなかったことが悔しかった。悲しかった。ルークにも心があるのだ。

タケルは一点を見つめ1人頷いた。
「俺が何で生まれ変わったのか…ずっと分からなかったけど、もしかしたらこれが運命だったのかもしれない。誰かの為に正義を貫くんだ」

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