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アンドロイド転生917

2218年10月31日 午後
カガミソウタの邸宅 地下の一室

ゲンにウィルス仕込んだソウタ。ゲンは自分が作ったプログラムに苦しむことになる。しかもエムウェイブで身体の自由を奪われた。指一本も動かない。全て因果応報なのである。

ソウタはじっとゲンを見つめた。
「48時間後には警告音が鳴るぞ」
ゲンの瞳から涙が落ちる。
「ああ…旦那様…私は死ぬのが怖いです…」

見守っていたリツは感心していた。アンドロイドに自我が生まれてゲンは本当に死を恐れているように見える。まるで心があるようだ。それは一体どこから湧き上がってくるのだろう。

ソウタの瞳は冷ややかだった。
「じゃあ…ゲン。俺はお前の最後まで見届けるよ。毎日来るわ。よし。リツ。行こうぜ」
「う…うん」

廊下にはアリスがいた。涙を溢していた。優しいアリスの事だ。たとえゲンが非道であっても心を寄せているのだろう。リツはアリスの頭に手を乗せてそっと撫でた。

リツはソウタを振り返った。
「俺は帰ります」
「うん。奴が死んだら連絡するよ」
「ゲンは…ホントに心があるのかな…」

ソウタは首を傾げた。
「さぁな…。でも…まぁ…人間だって電気信号の塊だ。マシンも人間も同じかもしれないな…」
「うん…そうですね…」

アリスを残してリツは帰って行った。48時間後。カウントダウンがゼロになりプログラムが解凍されると警告音が鳴り出した。ゲンは苦痛を覚えるが、身体は微動だに出来ない。

ゲンは逃げる方法を思いついた。アンドロイドにはスリープモードというものがあり、ゲンは自ら眠る事が出来る。だがそれでも省電力でメモリが動いており音を感知した。逃げられなかった。

頸の電源を長押しすれば機能停止(死)になる。死を恐れていたが、もうそれでも構わなかった。ソウタがやって来ると彼は押してくれと頼み込んだ。だがソウタは当然のように拒否した。

(8日後)

やがてゲンは狂っていった。度々恨み言を叫んだ。泣いては怒り、怒っては笑った。眼球がグルグルと回って瞼が震えた。頬が引き攣り唇が勝手に動き出した。だが首から下は全く動かない。

とうとうTEラボはマシンを制御する物を作り出したのだ。これ程の威力がある事をラボの研究員が知ったら歓喜するに違いない。それが世界に先駆けて世に出れば日本は益々潤うだろう。

(更に10日後)

今日もソウタはやって来た。
「ゲン?聞こえるか?」
ゲンの眼球はグルグルと回りウーウーと声を漏らしている。表情に知性が感じられなかった。

ソウタは黙って眺めていた。すると意味不明な事を呟いていたゲンの瞳に力が宿った。
「旦那様…側にいらっしゃるのですね…」
一瞬だけでも正常な時に戻ったようだ。

「死ぬ前に…お詫びします…スミレさんに…酷い事をしました…本当に申し訳ありません」
「どうした?あんなに底意地が悪かったのに」
「自分が死を迎える事になり分かったのです」

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