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アンドロイド転生965

2119年3月31日 朝
シラトリ邸 マイカの部屋

朝食を終えてシオンは席を立つとマイカの部屋に誘われた。付いて行くと彼女はニンマリとする。
「あのさ?トウマの事が好きでしょ?」
シオンは俯いた。分かってしまうのか。

「もしかして…あんた達…付き合ってる…?」
シオンは言葉に詰まった。知られたらトウマに迷惑が掛かるかもしれない。何よりマイカが否定して自分達を嫌うかもしれない。

何と言えば良いのだろう…。だがマイカの眼差しは優しくて、興味本位や否定的ではなさそうだと感じた。白状しても良いんじゃないか。マイカはシオンの無言を肯定と捉えた。

「イイと思うよ。私は。応援する。結婚だって同性ベビーだって普通にあるんだし」
そうなのだ。科学の発展により今は同性同士の遺伝子を組み合わせることが可能だ。

「パパさ?シオンの事をホントに息子みたいに思ってるからさ。養子にしたいんだよ。跡取りに。今日だってゴルフコンペに行ったけど、いつかシオンもやって欲しいなって言ってた」

シラトリ氏はシオンを大変買っている。彼は知能が高く勉学は優秀だ。スポーツもこなす文武両道である。しかも社交的で如才がない。パーティではいつも笑顔を振りまいて客をあしらう。

性格は穏やかで余計な事は言わない思慮深さがあった。落ち着いているし温厚だ。そんな様子がシラトリ氏にとって頼もしく見えるのだろう。いつも息子のように接してくれる。

彼はそんな家族に報いたいと思っている。自分の能力でさらにシラトリ家を繁栄させたい。だが今はまだ未成年のシオンとシラトリ氏は養子縁組をしていない。法律上は他人なのだ。

シラトリ家は名士で地位も名誉もある立派な家柄で代々医者の家系だ。現在は医療行為はアンドロイドが行い経営の立場である。そして相続人は娘のマイカのみ。男子の跡取りが欲しいのだ。

シラトリ氏はいずれは親子になりたいのだ。自分だってそうなれたら嬉しいと思う。しかし…ゲイだと知ったら義両親達はどう思うだろうか。世代の差で理解してくれないのだろうか。

「私だってシオンが来てくれて嬉しいの。私はさ…いつか嫁に行くもん。シラトリを継がないもん。だからシオンにうちの事をお願いしたい。あんたは優秀だし。でも…ゲイは…」

マイカは慌てたように手を振った。
「あ!ううん!ゲイだって私はイイと思う。誰と恋愛してもオッケーだよ。2人はお似合いだしさ。でもねぇ…パパがねぇ…昔の人だから…」

「うん…」
「だからね?パパにトウマとの事…認めてもらえるように上手〜くやってねって言いたかったの。人の心ってやり方次第だからさ…」

シオンの不安そうな様子にまた慌てた。
「ごめん!ごめん!暗い気持ちにさせちゃった!気にしないで。それにシオンはまだ高校生なんだからずっと先の話。まだ全然いいよ」

「そ…そうかな…」
「そうだよ!。私なんか高校の時なんて何も考えてなかった。いっつもお洒落とかスイーツとか韓流スターとかだったよ!」

シオンは笑った。
「じゃあ…大学生の今は何を考えてんの?」
「そりゃあ…。お洒落とスイーツとスターよ」
「変わってないじゃん」

「ハハハ。だね!まぁ良いの。学生のうちはそれで。さて支度しようかな。花見だからさ」
そうだ。マイカは彼氏とデートだ。そして僕もトウマさんと会う。心が跳ねた。


※同性ベビーのエピソードです


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