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アンドロイド転生400

新宿歌舞伎町:クラブ夢幻

レイラはミオが隠れたバーコーナーに向かって猛然と走り出した。獲物を見つけた豹のようだ。ジャンプをしてカウンターに乗り上がった。着地音が響く。素早くカウンターから身を乗り出した。

ミオはカウンターの下で割れたワインボトルを握っていた。レイラは上から覆い被さるようにミオを見下ろた。ミオはその一瞬の隙を見逃さなかった。レイラの腹に思い切りボトルを刺した。

レイラの目が驚きで見開く。
「この!クソガキ!」
「ガキって言わないで!」
14歳モデルのミオはいつまでも少女である事にコンプレックスを抱いているのだ。

ミオはレイラの腹のボトルに渾身の力を込めた。負けるものか…!だが痛覚のないアンドロイドにとってそれはダメージとは言えず、レイラは余裕の笑みを浮かべた。ミオの瞳が恐怖で見開く。

レイラはカウンターの上で拳を振り上げ、ミオの顔面を殴打した。その衝撃は凄まじく、眼前に火花が散る。先程の攻撃で彼女の鼻と頬が陥没したのだ。これ以上の痛手は危険だ。

余りの激しさにミオは戦意を失いそうになる。防御するだけで精一杯だ。レイラはミオの首を両手で掴んで持ち上げた。ミオの重さなど物ともしない。逃れようと暴れても余裕の呈だ。

ミオの身体は小柄と言えど、人間よりも遥かに重い。その重量をレイラは腕の力だけで上げるのだ。筋力の発達したマシンならではの力技だ。ミオの身体はなす術もなく引っ張られる。

ミオはカウンターに引き上げられ、脚が宙に浮いた。レイラはカウンターに仁王立ちになりミオをぶら下げている。その腕を外そうとミオは躍起になるがレイラは微動だりしない。

レイラの力強さをミオは思い知る。ファイトクラブ仕様のマシンと言うものは女性型モデルなど関係がない。生死を賭けた戦いの為だけに生まれたアンドロイドは圧倒的な強さだ。

ミオはホールに勢い良く投げ飛ばされゴロゴロと転がり腹這いになった。レイラは腹にボトルを刺したまま、ミオに向かって飛び掛かった。レイラの身体がミオに覆い被さった。その重さに圧迫される。

潰された蛙のようになり身動きひとつ出来ない。レイラは腕のコードに気が付いた。床に穴を開けた時に絡みついていた。ミオの首に巻くと一気に締め上げた。ミオの上半身はなす術もなく反り返った。

ミオは踠きながらも自分の腹の下にある硬いものに触れた。テイザー銃だ。レイラに投げ飛ばされた時に転がって銃の上に止まったのだ。何としてもこのチャンスを活かさねばならない…!

首が凄い勢いで締まってゆく。レイラの力ならばミオの首は捩じ切られるかもしれない。いや、その前にコードが切れれば良いのだが…。海老反りになりながらミオは銃を握った。

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