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アンドロイド転生339

白水村:リビング 深夜

アオイは話があると言ってキリを呼び出した。そして思い切って話し始めた。新しく造った戦闘用アンドロイドでスオウを討つのは分かるがそれで良いのかと疑問をぶつけたのだ。

「そもそも、強奪したのはうちなんだから…スオウさんに返せば良いのでは?って思うの。お金で片がつかないかな?って思うの。倒すとか討つとかじゃなく…もっと平和的に済まないかなって…」  

キリは頷いた。
「うん。アオイの気持ちは分かるよ。でも…人間って…残酷なの。69年前にタウンの人間が村を襲ったの。20人も死んだの。私の祖父も」

アオイは悲しそうに俯いた。キリは続ける。
「私達は少数民族で先細りしている。いずれなくなる運命。それでもイイって皆んな思ってるの。タウンとは相入れない。戦うって決めてるの」

「待ってよ。それは大人達の判断でしょ?ルイは?子供達はどうなるの?犠牲になってもいいの?」
「勿論、子供達には幸せになってもらいたい。犠牲になって欲しくない」

アオイは鼻息を荒くした。
「だったら!戦いなんてやめようよ!」
キリは首を傾けた。
「アオイはうちらが負けるって思ってるの?」

アオイは目を丸くした。負けるとか勝つじゃない。人に苦しんで欲しくないだけだ。
「そもそもアンドロイドは人間に勝てないよ…禁止機構があるんだよ。スオウさん達を倒せない」

キリは暫く黙っていたが囁いた。
「タケルがいる」
「タケル?タケルが?どう言う意味?」
「スオウを討ちに行くって。ルークと」

アオイは呆然となる。
「な…なんで?」
「スオウと息子を倒すって」
「キリは…タケルに罪を犯させるの?」

キリはタケルにスオウを倒すのが無理ならば潔く身を引けと言った。彼に枷を背負わせたくなかった。だがいちいちアオイに告げるべきではないと思った。後の判断はタケルがする事だ。

アオイの顔が引き攣った。
「ひ、酷い!タケルはそんな事をする為に生まれ変わったんじゃない!」
「タケルの判断なの」

アオイは愕然となる。何がタケルの判断だ?怒りが湧いてきた。思わず立ち上がった。
「そう持っていったのはあなたよ!タケルがそうせざる得なくしたのよ!」

「俺の判断だ」
アオイの背中に声が飛んだ。振り返るとタケルがリビングの入り口に立っていた。タケルはやって来るとソファにどかりと腰を下ろした。

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