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アンドロイド転生393

品川区:スオウトシキの邸宅

スオウの側近のトミナガの眼前に躍り出たタケルにトミナガは怯んだものの直ぐに体勢を立て直しタケルに向かって銃を向け、一刻の躊躇いもなく撃った。だがトミナガの腕は天を向いていた。

タケルがトミナガの腕を払ったのだ。タケルは銃身を掴み一回転をさせると銃は彼の手の内にあり、銃口がトミナガの眉間を狙っていた。瞬きをする間の出来事でトミナガは絶句した。

舎弟がタケルに向かって撃つ。難なく避ける。その流れ弾がトミナガの肩を貫通した。トミナガは倒れ込み、舎弟が目を見開いた。1人2人と我に返り、漸く無駄な銃撃が止んだ。

舎弟が蒼白になって走り寄った。
「あ、兄貴!大丈夫ですか!」
トミナガは肩を押さえてタケルを見上げた。
「何でだ?マシンのくせに人間に手を出すのか?」

タケルは澄まして庭を見渡した。半数以上の舎弟が倒れていた。
「安心しろ。俺は無闇に人を殺さない。だがな、アイツだけは違う」

タケルは銃口をスオウトシキに向けた。スオウは動じる事なく不敵な様で鷹揚に構えていた。トミナガは驚愕し、憎々しげにタケルを睨んだ。
「何をする!くそマシンめ!」

舎弟達は戸惑っていた。人間を倒すマシンなどいるのか。いや、確かにこの目で見た。次々と仲間は没した。そして眼前ではそのマシンがスオウに向かって銃口を向けている。

これはどうしたものか。本当に組長を撃つつもりなのか。不安になりトミナガも舎弟も動けなかった。緊迫した時が流れた。庭は静まり返り、樹木の葉擦れの音が漣のようだった。

スオウが一喝した。
「待て。お前は何者だ」
「大量生産のモデルだけど、唯一無二の存在かもな。人間など俺の敵ではない」

スオウは眉根を寄せた。
「人間を撃てるのか?」
タケルは楽しそうに片頬を上げた。
「試してみようか?」

本来ならばアンドロイドは人間に対し暴力も殺人も犯す事は出来ない。行えば禁止機構が働き機能停止になる。それは死に等しい。万が一、暴走して人間を襲うかもしれない。その対策だった。

スオウは益々眉間に皺を刻む。 
「マシンが何故人間を倒せる?まさか…殺人も出来るのか?命令すれば服従するのか?」
タケルはニヤリとした。
「さあてね?」

スオウは銃口を向けられているにも関わらず悠然としていた。ガーデンテラスの椅子に座り両手を組み、腹に乗せている。やがて何か楽しい事でも思いついたかのように瞳がギラリと光った。

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