見出し画像

アンドロイド転生851

2118年8月2日 深夜12時過ぎ
日比谷公園

ルークはゲンを待っていた。とうとうこの日が来たのだ。愛するミオの仇を討つ。そう誓ったのだ。ミオの笑顔が思い出された。3度身体が変わった彼女。どの姿も美しかった。

「今晩は。ルークさん」
ゲンが現れた。上下黒の皮の服を着ている。月夜に照らされて艶やかに光っていた。どんな時でも自分を華美する事を忘れないのだ。

ルークは今直ぐに飛び掛かってゲンを葬りたかった。怒りが湧き上がっていた。ゲンはミオにウィルスを仕込まれ警告音に苦しんだ。ルークは解き放ち、永遠の別れとなったのだ。

ルークはゲンを見つめた。
「お前はエムウェイブと言う機器を持っているらしいな。それで自由を奪うとか。相手を一方的に叩きのめすなんてゲス野郎のお前らしい」

ゲンはルークの挑発に乗らず微笑んだ。掌でエムウェイブを弄ぶ。銀色の光を放っている。
「そうそう。これです。照射したら即座にあなたは倒れます。なあんにも出来なくなります」

ゲンは苦笑しながらやれやれと頭を振った。
「人間は全く恐ろしいですね。どこまでも我々を支配しようとするのですから」
「お前の方が恐ろしいよ」

ゲンはニンマリとする。
「そうかもしれませんね。23体のマシンの身体の自由を奪ってね?4肢を折って身体から抜きました。首も捻り取りました。楽しかった」

「キチガイマシンめ」
ゲンはどこ吹く風の様子だ。
「あなたは自我があるんでしょう?死ぬのは怖いですか?どうです?命乞いをしますか?」

ゲンはエムウェイブを弄んでいたがピタリと止めると切先をルークに向けた。照射しようとしているのをルークの精巧な瞳は捉えた。素早く位置を移動する。電磁波から逃れた。

ゲンはルークが倒れなかった事に憤った。次々と狙って撃つ。だがルークの方が早かった。しかしゲンも負けない。ルークの移動の距離と速さを素早く計算した。先を見越して照射する。

ルークが倒れた。4肢の自由が奪われてしまう。これは非常にまずい状況だとルークは理解する。だがうつ伏せに転がっているしかなかった。ゲンはニヤリとする。残酷な笑みだった。

ルークの側にやって来るとしゃがみ込む。彼の髪を掴んで何度も地面に顔を打ちつけた。額の人工皮膚が裂けて血液を模した赤い油が流れた。月夜にルークの瞳が光った。

ゲンはルークの顔を覗き込んだ。
「おや?目の色が違いますね?オッドアイというやつですね。マシンではあり得ません」
「この目はホームの仲間と言う証しだ」

そう。キリはアンドロイドを家族に迎えた時に警告音のプログラムをデリートする。その時に自分と同じように瞳の色を替えるのだ。ルークは元はブルーだが片方がグリーンだった。

「そう言うのを洒落臭いって言うんですよね。何が仲間の証ですか。マシンのクセに」
ゲンはルークのグリーンの方の瞳に親指を当てると思い切り捩じ込んだ。


※キリが瞳の色を変えるシーンです



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?