アンドロイド転生484
リペア室の宙空にホログラムのイヴが浮かんだ。
『ミオ。おめでとう御座います』
ミオは満面の笑みだ。
「ねぇ!イヴ!私、綺麗でしょう?」
イヴはニッコリとする。
『はい。とても』
「私はもう子供じゃないんだよ!大人なんだよ!ね?キリ、ルークに見せたいの。いい?」
ミオとルークは恋人同士だ。
イヴが真面目な顔をした。
『その前にご報告があります。あなたのメモリに落とされたウィルスプログラムを精査したところ、どうしても概要が掴めませんでした』
クラブ夢幻でレイラを倒したミオだったが、レイラの兄だというアンドロイドのゲンにウィルスを仕込まれてしまったのだ。レイラの敵討ちだと言っていた。苦しめとも。
ミオの顔が恐怖で強張った。
「え…。じゃ、じゃあ…どうなるの?」
イヴは微笑む。
『でもデリートは出来たのです』
ミオは目を見開く。
「え…!そうなの⁈じゃあウィルスはいないの?大丈夫なの?」
『はい』
ミオは自分自身のメモリをスキャンしてプログラムがない事を確認し安堵した。
「本当だ。いない!やった!良かった!」
キリもリョウも微笑んだ。
イヴが扉の方に顔を向けた。
『ルークを呼びました。やって来たようです』
扉がスライドし、ルークが緊張をした面持ちで立っていた。マシンでも情動はあるのだ。
ミオとルークの目が合った。ミオも緊張する。
「ど、どう?…ミオだよ。私だよ」
ルークは足早にやってくるとミオを抱き締めた。
「凄く綺麗だ。お前はどんな時も綺麗だ」
ミオは抱き竦められて固まった。ルークの体温を感じて心が温かくなった。涙が自然に溢れて来た。アンドロイドも泣くのだ。
「うん…うん。そう言ってくれると嬉しい」
ミオは感動していた。ルークの肩に額を当てた。以前と違って自分の背の位置が高い事が嬉しかった。 25歳の私。30歳クラスのルーク。恋人同士として漸く見合う年齢になったのだ。
ルークは唐突にミオの腕を掴んで引き剥がした。
「ウィルスはどうなった⁈」
ミオは微笑む。泣き笑いになった。
「大丈夫なの。デリートされたの」
ルークは安堵して再度ミオを抱き締めた。
「良かった。本当に良かった」
「私は生きられるの。ずっと…ずっとよ」
ルークは何度も頷いた。
リペア室にいる誰もが安堵した。だがヘブンという名のクラウドよりも上の階層からウィルスプログラムが生まれ、ミオのメモリに落とされた。フォルダがカウントダウンを始めた。
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