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アンドロイド転生511

銀座ホテルペニンシュラ:プール

「ゲン〜!」
ヒカリが水の中でゆっくりと歩きながら手を振った。ゲンはプールサイドのデッキチェアに横たわり、柔かに微笑んで手を振り返した。

銀座の高級ホテル。ペニンシュラの最上階にあるプールでアンドロイドのゲンは昨晩知り合った人間のヒカリと共に過ごしていた。高級バーで彼女と出会った。一目見て気に入った。

ヒカリは目を見張るほど美しく、年齢は28歳で人間の男女ともアンドロイドとも恋をする類の女だった。仕事は画家で国立近代美術館で個展を開く程の実力だ。今は休暇中である。

ヒカリもアンドロイドのゲンに惹かれた。彼は端正な容姿で品性があり、女性の扱い方も上手かった。2人はすぐに意気投合した。彼にホテルに招かれて一晩を共に過ごした。

ゲンはベッドのマナーが素晴らしかった。優しかったし、愛に溢れていた。彼女はゲンの腕の中で何度も歓喜した。今までアンドロイドとは数々の経験があったがゲンは秀でていた。

そしてゲン自身も人間の女性に喜びを与えた事に歓喜した。たとえ性的快楽はなくても満足だった。ヒカリは朝になっても家に帰らず彼を求めた。いつまでも濃密な時を過ごした。

昼近くになり、今度は食欲に目覚めたヒカリは室内でブランチを食べた。その後2人はホテル内で水着を買うとプールにやって来た。アンドロイドの防水機能は完璧だ。

ゲンはこの数日の出来事が嬉しくてならない。従事する存在だった自分が自由を謳歌している。高級ホテルに泊まった。あらゆる事を楽しんだ。人間よ?マシンが超える日は近いぞ?

「何を笑ってるの?」
ヒカリが目の前に立っていた。どうやら知らずに笑っていたようだ。
「ヒカリさんがあまりにも美しいからです」

ヒカリは輝くような笑顔を見せて、ボーイアンドロイドにカクテルを頼んだ。間もなく美しい飲み物が運ばれた。ゲンは水だがグラスを軽くぶつけ合う。涼やかな音が響いた。

プールから出たら、その後はヒカリの家に行く。恵比寿に住んでいるそうだ。彼女から誘われた。余程自分を気に入ったようだ。まさかこんな展開になるとは思わなかった。

ホテルの住人になったとは言え、所詮はアンドロイド。主人がいつまでも来ないと怪しまれる。ある程度滞在したらホテルを変えようと思っていた。それが幸運にも棲家が見つかったのだ。

だが気まぐれな人間の事だ。いつ飽きられるかも分からない。そしたら…そう。また女性を見つけよう。人間の女をモノにする方法は学んだ。簡単だった。と、ゲンは笑う。

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