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アンドロイド転生524

東京都中央区:築地警察署

リツの両親は刑事を目の前にしていた。マユミは目を見開き驚きの声を上げた。
「え⁈会えないんですか?親なのに?」
キヨシの顔も不満げに強張った。

刑事はゆっくりと頷いた。
「はい。被疑者は弁護士以外は面会が出来ません。弁護士アンドロイドを雇っていますか?」
2人は首を横に振った。

「では国選弁護士アンドロイドを呼びます。ご両親は被疑者の着替えの用意をして下さい」
キヨシは顔を赤くして怒りを露わにした。
「被疑者被疑者って言うな!」

マユミは両手を口に当てると肩を振るわせて泣き出した。普段のマユミは肝が座った女だった。多少の事には動じない自信があった。だが今回ばかりは違った。不安が拭えなかった。

泣いている被疑者の母親を目の前にして刑事は困ったような顔をした。彼は中年だが警察官人生で初めての経験をしており緊張していた。こんな大役を任されて難儀していた。

「え、えーと。すみません。被害届を出された以上、こちらは法に則って捜査をしないといけません。どうぞお座り下さい。お茶でも如何ですか。おい。お茶をふたつ持ってきてくれ」

アンドロイドの警察官が立ち上がった。警察組織には人間とアンドロイドが半々だった。だが平和な日本では殆ど事件が起こらず、両者とも平和協力隊としての位置付けだった。

4日前の歌舞伎町のクラブ夢幻の事故で俄にその職務を思い出したような有様だった。刑事は心で愚痴る。早く、弁護士アンドロイドがやって来てくれないかと。プロに任せたかった。

マユミが涙で頬を濡らしながら刑事を見た。
「あ、あの…。何かの間違いだと思うんです…。うちの子は優しい子です。暴力を振るうなんて絶対にあり得ません。信じて下さい」

キヨシも何度も頷いた。
「そうです。誰にでも優しく接する男です。その…被害届を出された方に私達がお会いする事は出来ませんか?真偽を確かめたいんです」

刑事は警察官アンドロイドからお茶を受け取ると2人の前に差し出した。
「真偽は我々が調べます。息子さんの尊厳を奪うような事は致しません。大丈夫です」

マユミの目が見開いた。
「そ、尊厳…!奪う…!お、お父さん!」
マユミは恐怖に怯えて声を上げて泣き出した。刑事の気遣いが仇になったようだ。

刑事はオロオロとして頭を下げた。
「す、すみません。で…では弁護士が到着するまでこちらで暫くお待ち下さい」
彼は立ち上がるとさっさと部屋を出て行った。

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