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アンドロイド転生217

白水村:タケルとルークの部屋

「どうしてアオイは夜の狩をしないんだ?」
ルークがタケルに声を掛けた。ベッドで横になっていたタケルはチラリと彼を見て鼻で笑った。
「さあね」

ルークは微笑む。
「ミオがアオイはやっぱり人間なんだと感心していた。ミオは人間に憧れているからな。アオイの心は綺麗だと言ってすっかり夢中だ」
「綺麗?そうか?」

タケルは反論したくなった。
「アイツは世間知らずなんだよ。生前も転生してからも。清廉潔白なお嬢様で自分は全て正しいと思っている。柔軟な心がないんだ」

ルークは楽しそうに笑った。
「そうか。俺達の方が心が広いか」
「まぁ…本人の自由だけどな」
「そうだな。ここでは誰もが自由だ」

その時、扉を叩く者がいた。タケルは立ち上がるとドアを開けた。エリカが立っていた。
「ちょっといい?」
タケルは廊下に出た。

エリカは直向きな視線だった。いつもの事だが、より一層思い詰めているようだった。
「アオイと喧嘩したの?」
「喧嘩?してねぇよ」

ミオから聞いたに違いない。お喋りめ。大人になると誓ったのにする事は子供だ。
「言い合いしてたって」
エリカは上目遣いになった。

タケルは溜息をつく。
「夜の狩は犯罪だろって言うんだ」
「そう言ってるらしいね。私達に否定的なのよね」
エリカは不服そうな顔をした。

エリカがタケルの腕を掴んだ。
「ね?お願い。アオイと喋らないで。無視して」
「喋る事なんて特にねえけどさ」
「約束して…!」

タケルはエリカの自分に対する気持ちを知っている。これは嫉妬だ。最初はアンドロイドの恋心に驚いたが、マシンだって自意識があるのだ。恋愛をしてもいいじゃないか。

そうやって想いやる気持ちが成長なのだと思った。好かれる事に悪い気はしなかったが、エリカに対して同じような気持ちにはなれなかった。反対に彼女の愛情が時々重かった。

四六時中自分の周りにいるのだ。余りにも純粋で手に余った。アオイを無視しろなどと言うのも横暴だ。タケルは溜息をついた。
「俺はお前のモノじゃない」

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