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アンドロイド転生781

2118年6月7日 午前10時
東京都新宿区:平家カフェ 

店先にオープンを示す青いライトが灯った。直ぐにブランチを楽しむ者が訪れる。アンドロイドのチアキはにこやかに客を向かい入れた。ミシマユイもやって来た。チアキの知り合いだ。

「おはよう。先生」
先生はやめてくれと何度も願ったがユイは呼び続けた。彼女はチアキが17年前に保母をしていた頃の園児だ。現在は23歳。美しく成長した。

ユイはメニューを見ない。
「今日もお任せにする」
「はい。承りました」
チアキはニッコリとしてリツに告げた。

内階段から頭を乱したリョウが降りて来た。大欠伸をしている。朝が遅い彼は他人の家に泊まってもスタンスを変えなかった。昨日、都庁の手続きにやって来て平家カフェに泊まったのだ。

カウンターにいるタカオは呆れ顔だ。
「遅ようだな。リョウ。そんなんで一人暮らしなんて出来るのか」
「まぁ…ボチボチね」

店主のキヨシがコーヒーをリョウに出した。リョウは一口飲むと大袈裟に顔を顰めた。
「苦っ!!キヨシさん、ワザとだろ!」
皆が笑った。

リョウはじっくりと店内を眺めた。多くの人が食事を楽しんでいる。リョウは感心するようにほぅ…と溜息をついた。閉鎖的な村で35年を生きた彼にとって都会の何もかもが珍しかった。

チアキはユイのテーブルに食事を運んだ。ユイは目を輝かせた後、声を顰めた。
「あのね。ちょっと話があるの。人に会わせたいの。今度連れてくるね」

チアキは驚いた。アンドロイドの自分に会わせたい人がいる?そんな事ってあるのだろうか。ユイはニコニコと楽しそうだ。チアキも何だか嬉しくなって微笑むと頷いた。

その後タカオとリョウはショッピングモールに出向き沢山の買い物をして戻って来た。日用品や雑貨などホームの為の物である。やがて笑顔で店を出た。これから茨城県まで帰るのだ。

店主のキヨシが笑った。
「リョウ。イギリスに行く前の日もうちに泊まるといい。苦〜いコーヒーを出してやる」
「え〜!勘弁してくれよ〜!」

次いでキヨシはタカオを見た。
「皆に宜しく伝えてくれ。そしてたまにはキリを連れて来い。スパがあるぞって言ってな」
タカオは笑って手を振ると車に乗り込んだ。

2人が去ると平家カフェはディナータイムまで休憩となった。恋人同士のリツとアリスはいそいそと出掛けた。チアキはリツの母親のマユミとショッピングモールに行く事にした。

マユミはチアキに服を当てたりする。まるで娘のように扱ってくれるのが嬉しかった。
「もっとお洒落しなさい。可愛いんだから。チアキも彼氏を作りなさいよ」

チアキは目を丸くする。
「彼氏?私に?」
「そうよ。アンドロイドだって人間だって良いわよ。恋をして誰でも変わるのよ」


※ミシマユイの初登場シーンです


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