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アンドロイド転生637

メディカルセンター

タケルを追って病院内を足早に歩くアオイとサツキ。タケルはタカオと連絡を取り、モネのオペが無事に終了し容態も安定しているためICUから一般病棟に移った事を知った。

モネは麻酔で眠っており、母親のサクラコだけが付き添っているそうだ。病室前にタケル達が到着した。ベンチにタカオとキリ、ルイがいた。3人とも明らかに表情が落ち着いていた。

タカオが不思議そうな顔をする。
「何でアオイとサツキが来るんだ?」
タケルがチラリとアオイを見た。
「モネのナニーだったんだ」

ルイが父親を振り返った。
「そうなんだってさ。俺…モネんちで立体画像を観たぞ。モネの子供の頃の。アオイがいた。でも同じモデルだと思ってた」

アオイは胸に手を当て声を震わせた。
「モネ様と会えるなんて夢のよう…。サツキさんも知り合いだから連れて来たの」
ルイは頷いて病室のドアをノックした。

間もなく扉がスライドしてサクラコが顔を出した。ルイを見て怪訝な顔をする。
「アオイが来ました」
サクラコの顔がパッと輝いた。

アオイが一歩前に出た。
「サ、サクラコ様…」
「サ…サヤカ!!」
ナニー時代、アオイはサヤカと言う名だった。

サクラコが病室から身体を出した。アオイに向かって走り寄り、勢い良く抱きついてきた。4年振りの再会だった。
「ああ!サヤカ!会いたかった!」

アオイもサクラコを抱き締めた。
「私もです。お会いしたかったです…!」
アオイの瞳から涙が溢れた。こんな偶然があるものだろうか。運命とは奇跡を起こす。

4年前の丁度今頃。モネの12歳の誕生日の翌日にアオイは契約期間を終了しタカミザワ家を後にした。モネはアオイとの別れを惜しみ、大事なネックレスを譲ったのだ。

アオイはタカミザワ家で家族の一員として12年間を過ごした。80年もの未来に輪廻転生して孤独で堪らなかった。そんなアオイの支えになったのはサクラコ達だ。幸福な年月だった。

サクラコは離れてアオイを見つめた。
「当たり前だけど変わってないね。あの時のまま。爽やかだからサヤカって名前をつけたまま」
サクラコも変わらず美しかった。

アオイの声が震えた。
「モネ様は…モネ様のご容態は…」
サクラコの声も涙声になった。
「大丈夫。大丈夫。無事に終わったの」

サクラコはアオイの手を引っ張ると病室内に誘導した。身内だけと言う規則を破った。
「まだ麻酔で眠ってるけど…見てやって」
「は、はい」

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