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アンドロイド転生369

東京都新宿区歌舞伎町:クラブ夢幻

ルークとミオは建物の前に立っていた。彼らにとっては辛い思い出の場所だ。地下3階のクラブでは毎週末に戦闘ショーが開催される。アンドロイドの生死を賭けた一本勝負。

ルークもかつてはそこでバトルを繰り広げていた。戦う事、勝つ事が彼の生業だった。だが同じマシンを倒す事に嫌気がさして12年前にミオと共に逃亡した。だがまたここに戻って来るとは…。

ルークは顔を引き締めた。
「ミオ。行くぞ」
ミオが頷く。宿敵スオウトシキの息子のマサヤがVIPルームで浮かれている事だろう。

ルークとミオと共に5体の戦闘用マシンがクラブに足を踏み入れた。
「ちょっと待てよ!オマエら何もんだ?」
店の入り口で黒服のモヤシのような優男が叫んだ。

ルークは髪の黄色いモヤシ男を見た。目の下が黒く顔色は青白い。細身の体は貧弱でピンのようだ。ドラッグで太れないのかもしれない。人間だ。危害を加えるわけにはいかない。

「なんだ?オマエ…髪までモヤシみたいだぞ。そこをどけ。スオウマサヤに用がある」
モヤシ男は眉を釣り上げた。
「なんだ?コイツ?マシンのくせに」

モヤシ男のすぐ隣には屈強なアンドロイドがいた。ボディガードだ。一歩前に出てルークを遮った。
「ここは通しませんよ。私がいます」
アンドロイドらしく言葉遣いは丁寧だ。

ルークはマシンの顔を掴んで、払い除けた。ボディガードはよろけた。
「邪魔だ」
モヤシ男が叫んだ。
「おい!何やってんだ!倒せ!やれ!」

ミオは唇に人差し指を当てた。
「静かに。みんなが怖がるでしょ?」
入り口に群がる人々が不安そうな顔をしている。中には薄ら笑って興味津々の者もいた。

ミオは人々を見渡した。
「みんな、おウチに帰った方がいいよ!これからヤバい事が起きるから」
だが誰も去ろうとはしない。ドラッグで酔っているのかもしれない。

ボディガードはルークに向かって拳を振り上げた。だが1体とルーク達7体では圧倒的な差だった。アンドロイドは無惨にも敗退した。モヤシ男は怒りと恐怖でブルブルと震えた。

クスリや酒で浮かれた人間達は目を輝かせた。
「え?リングじゃないとこでバトルするの?」
「面白くなってきたぞ」
「金を賭ける?」
「やれやれー!」

モヤシ男はスマートリングを起動させ、スオウマサヤの舎弟のミヤザワに告げた。
「マ、マシンが無理やり入ろうとしています!ボディガードがやられました!応援をお願いします!」
ルークとミオを先頭に5体は店内に入って行った。

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