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アンドロイド転生792

2118年6月17日 夕方
東京都港区:モネの高校前

高校の正門で佇むアオイ。骨折したモネのサポートで送り迎えも日課だ。間もなくモネは松葉杖を付きながらやって来た。
「終わったよ〜」

笑顔でバッグパックをアオイに渡す。だがモネは直ぐに眉根を寄せた。
「カー?(サヤカ)どうしたの?」
「え…?」

モネはじっとアオイ見つめた。
「顔つきが違う。なんか問題?」
アオイはモネの勘の良さに驚いた。慌てて首を振ったが意に反して涙が溢れ出た。

「ど、どうしたの?何かあったの?」
アオイは何度も頬を拭ったが涙が止まらない。
「え、えと。…あの…その…私…」
「教えて。何でも教えて…!」

モネには何でも教えたい。だがシュウの余命の話になれば必然的に輪廻転生の事も伝えなくてはなるまい。モネに言うのか?自分が生まれ変わったことを。だが言えるのか?

アオイは黙り込んでしまった。学校の正門の前で佇む2人の間を多くの生徒達が通り過ぎて行く。中にはモネに手を振って別れの挨拶をする生徒もいる。そしてアオイにも。

やがてモネは歩き出した。松葉杖を器用に使う。
「行こ。歩きながら話そう」
「は、はい」
アオイは慌てて付いて行く。

新緑の並木道。夕暮れが近づいて来ても空は高く蒼い。西の空がピンクや紫に染まっていた。
「ねぇ?カー?私…ホントに嬉しいんだ。カーとまた逢えるなんて奇跡だよ?」

モネは微笑む。
「優しいカーに育てられて本当に良かったなぁっていつも思う。だから私も優しくしたい。カーに悲しい事があったら力になりたい」

なんて嬉しい事を言ってくれるのか。アオイは感激して新たな涙が零れた。モネは幼い頃から優しかった。泣き虫のアオイをいつも慰めてくれた。小さな手でアオイの頭を撫でてくれたものだ。

アオイは唇を舐めた。モネなら…モネなら…私が輪廻転生した事をきっと信じてくれる。
「モネ様…。有難う御座います。嬉しいです。大事なお話があります。夕食後に致します」


タカミザワ家:モネの部屋

夕食後。アオイは片付けが終わり、モネは宿題を済ませた。9時。頃合いが良いだろう。アオイはモネの部屋をノックした。扉がスライドし、緊張した面持ちのモネがいた。

アオイも緊張していた。ソファに座ると何度も深呼吸をした。今まで輪廻転生を打ち明けたのはサツキとホームの家族だけ。話すには少しは勇気が必要だったが今ほどではない。

生まれ変わりだなんて荒唐無稽な話をモネが信じてくれるのか。いや…きっと信じてくれると思うものの、否定されたらどうしようと言う不安もある。モネに嫌われたくないのだ。

だが決意した。アオイは息を吸い込んだ。
「モネ様。全てをお話しします。まず…私は嘘もついてないし妄想でもありません。最終的にはモネ様のご判断に委ねますが聞いて下さい」


※幼いモネがアオイを労わるシーンです


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