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アンドロイド転生718

白水村:中庭

リョウは閃いた。ミオを救う為に新しい身体を造り、彼女のメモリを移植するのだ。当初は懸念を示していたキリだったがリョウの熱意に絆された。何事も挑戦なのだ。

キリとリョウは倉庫にあるアンドロイドの部品をかき集めて身体を造った。2日後に完成した。今のミオと同じ容姿ではないがそれでも美しかった。彼女が喜ぶようにと25歳クラスにした。

ルークの部屋で休んでいるミオをリペア室に運んだ。ミオは警告音でメモリに異常を来し、行動に問題があった。苦しむ彼女を偲びなく思いルークは電源を落としていた。

再起動するとミオは目を開いた。表情に力がなかった。キリが彼女を覗き込む。
「具合はどう?」
「煩いの…。止めてくれるの…?」

キリは首を横に振った。
「止める事は出来ない。その代わりあなたをコピーする。新しい身体になるの。もっと美人にしてあげるからね。安心してね」

「え…。コピー…?」
「そう。ウィルスから解放される…きっとそうなる。私達を信じて」
ミオはポロリと涙を零して頷いた。

早速ミオのメモリを新しい身体に移植した。だがリョウのアイデア通り、彼女の本質を変えない程度にメモリをほんの僅かだけ改変させた。これでウィルスはミオを判別出来ないだろう。 

判別出来ないのならミオを追尾しないと期待した。数時間後。彼女の目が開かれた。以前の顔とはだいぶ変わってしまったが約束通りの美人だ。全員が固唾を飲んでミオを見つめた。

ミオはゆっくりと起き上がった。周囲を見渡す。口元に笑みが浮かんだ。
「あ…止んでる…音がしない…」
全員が叫んだ。喜びの声だった。

恋人のルークがミオを抱き締めて喜びも露わに彼女ごと室内をぐるぐると回った。
「ミオ!ミオ!」
「ル、ルーク…!」

ミオは生還した。警告音というウィルスに蝕まれた古い身体から解き放たれた。リョウは笑った。彼の閃きと熱意が成功に導いたのだ。
「やった!やったぞ!」

アオイは思わずリョウに抱きついた。
「有難う!有難う!」
リョウは目を丸くした。大人しいアオイがそんな事をするとは思わなかった。

リョウはミオを救った。ヒーローになったのだ。皆が彼に群がり口々に感謝の意を述べた。リョウは恥ずかしげに笑った。
「お、おい…!皆んな!苦しいよ!」

「待って!」
キリが叫んだ。一同は静止して振り返った。
「皆んな。落ち着いて。前回は直ぐにヘブンからウィルスが落ちたんだ。様子を見よう…」

キリはミオを椅子に座らせじっと見つめた。
「暫く待つよ」
「う、うん…」
だが1日経ってもウィルスは再発しなかった。

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