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アンドロイド転生578

東京都港区麻布:タカミザワモネの自宅

夜10時半。モネはパジャマ姿でリビングにやって来た。母親のサクラコは立体画像のテレビドラマを観ながらワインを飲んでいた。
「ママ。ちょっとイイ?」

サクラコは頷いてニッコリとした。彼女はいつでもご機嫌なのだ。モネが対面に座った。
「リングをもうひとつ買って欲しいの」
リングとはスマートリング。携帯電話だ。

「なんで?」
モネは上目遣いになった。
「あ、あのね?ルイに渡しちゃったの。連絡を取りたくて…」

サクラコは不思議そうに小首を傾げた。モネはルイの家庭事情を打ち明けた。サクラコの顔がみるみると険しくなった。モネは顔色を窺う。やはりまずい状況だと悟った。

「モネ…。そんな子と付き合うのは…ママは嬉しくないな。ルイ君は会った事があるし、礼儀正しくて良い子だけど…。応援は出来ないよ」
「ママ。お願い。分かって。好きなの」

恋多き女のサクラコは常時3人の恋人がおり、人を好きになる気持ちはよく分かる。娘にだって自由に楽しく恋愛して欲しいと思っている。だがそれとこれとは話が違う。

平家の落人。聞いた事がある。日本国民ではない気がする…。リングを起動した。キーワードを音声入力してWEB検索をする。たちまち目の前に詳細が浮かび上がった。

1000年以上前。平家が敗北した結果、山間部などの僻地に隠遁した平家の一門やその郎党。その子孫が約100年前に発見された。現在、茨城県白水村にて少数で暮らす。

国からの再三の国民登録の要請にも応じず独自の文化を貫く。昨今は近親婚の弊害有り。
「ほら。やっぱり日本国民じゃない…!」
そんな母親の言葉にモネは不服の顔をする。

サクラコは眉間に皺を寄せた。
「日本人として登録されていないんだよ?そんな子と付き合っても幸せになれない。ママはやっぱり反対。ダメよ。モネ。別れなさい」

モネは口を真一文字にして母親を見つめた。
「イヤ!別れたくない!」
「あっちの親だって反対するわよ。絶対」
「反対しないもん。会った事あるもん」

サクラコは驚いて目を見開いた。
「親に会ったの?いつ?」
モネは胸を逸らした。
「1月。ルイのお父さんに会ったの」

ルイと新宿のショッピングモールで待ち合わせをした時に父親がやって来た。モネの存在に驚きつつも快く昼食に誘ってくれたのだ。父親のいないモネにとって新鮮で羨ましかった。

「あなた騙されているんじゃない⁈国民じゃないのよ!お金とか狙っているのかもしれない!ダメよ!モネ!危ないわよ!」
何で詐欺の話になるのだ?モネは呆れた。   


※モネとルイの父親が会ったシーンです


※ルイがタカミザワ家を訪れたシーンです



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