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アンドロイド転生515

銀座:ホテルペニンシュラ

ドウガミリツはミオを助けるべくゲンと対峙しようと決めていた。彼の乗ったタクシーが静かに停止した。リツは降り立ちホテルを見上げた。白亜の円柱形の巨大な建物。高さは3階ほど。

2040年に発生した第二次関東大震災で関東地方は壊滅した。誰もが絶望したが見事に復興した。地震の教訓を活かし15m以上の建造物はなく新たな未来都市として日本は変貌したのだ。

リツは施設内に足を踏み入れた。多くの人間やアンドロイドが集っていた。コンシェルジュアンドロイドにプールの場所を尋ねた。最上階だと分かった。エレベーターに乗って辿り着く。

プールの入り口にはフロントアンドロイドが座っていた。リツが通り過ぎると声をかけた。
「お客様。お着替えはお持ちですか?」
「ない。中のマシンに用があるだけだ」

アンドロイドは極上の笑みを浮かべた。
「施設内は水着が原則です。お着替えを済ませてからご入室下さい」
「急いでいるんだ」

無視して入ろうとするとアンドロイドは慌てて立ち上がった。リツを止めようとする。
「邪魔をするな。妹の命が危ないんだ」
リツにとってミオは大事な家族だ。

アンドロイドは呆気に取られた顔をした。直ぐに慇懃に頭を下げた。
「これは…失礼を致しました」
「入るぞ」

リツは施設内に立ち入った。アンドロイドは引き下がったが一緒について来た。吹き抜けの広い室内は熱気に包まれていた。リツは周囲を見渡す。多くの人が泳いだり寛いだりしていた。

アンドロイドのゲンの顔はソウタから知らされている。いた。サマーベッドに横たわり隣の女と手を繋いで微笑んでいる。全くいい身分だ。足早に進むと2人の前に立ちはだかった。

リツはゲンを見下ろした。
「おい。立て。俺と来い」
ゲンは不思議そうな顔をした。
「どちら様ですか?」

リツはゲンを睨む。腹が立ってくる。
「ミオにウィルスを仕込んだな?」
ゲンは小首を傾げた。
「ミオ…?」

ゲンは思いついたように目を見開いた。
「ああ!はいはい!そちらの関係ですね?」
「そちらの関係だと?ふざけるな。今直ぐにミオからウィルスを外せ。命令だ」

ゲンの隣の女性が不思議そうな顔をした。
「ゲン。誰?この人。主人なの?」
「いいえ。ヒカリさん。違います。彼の仲間は私の妹を殺したんです。残酷にね」

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