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アンドロイド転生697

白水村集落:シオンの部屋

シオンは鏡を眺めていた。今日も自分は綺麗だ。目元には憂いがあるし睫毛は長い。鼻筋も通っているし小鼻は小さい。赤い唇は形が良く顎のラインは絶妙だ。滑らかな白い肌。銀髪。紫色の瞳。

細身の身体。身長はまだ伸びそうだ。高い腰。長い脚。だがシオンは残念そうに溜息をつく。こんなに自分は綺麗なのに…。女の子じゃないんだよな。いつかおじさんになるんだよな。

16歳の彼は中性的な美しさがあった。男性ホルモンがあまり活発ではなかったのだ。それが嬉しかった。シオンは特別女性になりたいわけではないが、男性である事が怖かった。

シオンはまた溜息をつく。いつかは自分の身体はゴツゴツとして来てヒゲがボーボー。禿げるかもしれないし…肥って…父さんみたいに…あんな風になっちゃうのかもしれない…。ああ。嫌だ。

シオンは綺麗な男性である今の自分が大好きだった。そして同じような綺麗な男性に恋焦がれた。テレビを観ては中性的な俳優やタレントばかりに目が行った。気がつくと追っていた。

ずっとタウンに行ってみたかった。きっとあそこには…東京には芸能人が沢山いて…自信満々で街を闊歩しているのだろう。僕も一緒に歩きたい。綺麗な僕らは注目の的だろう。

ルイ達がこっそりとタウンに行って罰を受けて渋々とトイレ掃除1週間をこなすのを羨ましい思いで眺めた。ああ。僕もタウンに誘ってくれたら良かったのにと何度も思った。

それなのにタウンに行く事が掟破りだったのに、なんと今度は街に行けと大人は言い出した。シオンの両親は存続派だったので、議会では敗退したが子供は街に送ると言うのだ。

父親は難しい顔をした。
「嫌かもしれんが、タウンに行け。俺達とは離れて暮らす事になるがお前のためだ」
全然嫌じゃなかった。大喜びだった。

もうすぐ17歳だ。親が恋しい年頃じゃない。僕は街で暮らして学校ってところに行って学んで遊ぶのだ。それにタウンにはあらゆる物があるらしい。なんて魅力的なんだろう…!

母親は涙ぐんだ。
「寂しいけれど我慢してね。タカオさんがちゃんと手続きをしてくれるからね」
寂しい?我慢?全然だ!

別にシオンは冷徹な人間ではない。両親を愛しているし思い入れも情もあった。だが平凡な村の暮らしに飽き飽きしていた。もっと刺激ある毎日を送りたかったのだ。

シオンは母親の気持ちを汲む。
「うん。頑張るよ。父さんも母さんも今まで育ててくれて有難う」
母親は泣き出した。

まだタウンに行く日程も決定していないのに両親は息子と離れる事が辛かった。当の本人は平気だった。早く街に行って色んなことがしてみたかった。夢は膨らむばかりだった。

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