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アンドロイド転生455

青海埠頭

アオイの瞳に悲しみの色が宿った。
「あなたのファイトクラブのマシンが襲って来たのです。戦いになり…それで私の家族が犠牲になりました。3日前の事です」

スオウは眉根を寄せた。ファイトクラブのマシン?そうか。マサヤか!漸く合点がいった。スオウは息子のマサヤを振り返った。
「お前が何かをしたのか?」

マサヤは唇を歪めた。
「父さんがTEラボを探れって言ったろ」
そうだ。ダークウェブの情報から我が家の資産を奪ったのはTEラボのマシンだと突き止めた。

マサヤは鼻に皺を寄せた。
「うちのマシンとバトルになったんだよ」
「そうか」
スオウは漸く理解した。

スオウはアオイに向かって歩き出した。側近のトミナガと愛人のクレハが慌てた。
「く、組長!」
「あなた!」

スオウはアオイの前で立ち止まって薄ら笑った。
「おやおや?今度は小娘のアンドロイドか。随分と仲間がいるもんだ。お前は何だ?交渉人か?」
「はい」

アオイはひたと彼を見つめた。
「もう一度言います。仲介者になればあなたは大金が手に入ります。それで私達が奪った事をナシにして頂けませんか?怒りを収めて下さい」

スオウは笑い出した。
「お前は何か勘違いをしているな。いいか?奪われて腹が立つのは金じゃないんだ。誇りなんだ」
「誇り…?」

スオウは大袈裟に息を吐いた。
「あの盗まれた絵画は人に贈る物だった」
続けてイラついたように顔を顰めた。
「約束を違えて私の汚点となった」

アオイは呟く。
「汚点…」
「ああ。人としての誇りを傷つけられた事が私は許せないのだ」

スオウは不敵に笑った。
「金など要らぬ。だから仲介者などならぬ」
アオイは言葉が返せなかった。スオウは一筋縄でいかない。プランAで手を打たない。

アオイは溜息をついた。スオウは金が手に入れば満足すると…いや、もしかしたら足りないと言って、更に要求するかと思っていた。どうやら違うようだ。彼にもポリシーがあるらしい。

「…ではこちらの提案には乗らないと」
「ああ。そうだ」
そうなるとプランBも発動せねばならない。彼の次男を交渉に使う。いや…脅迫だ。 

アオイは感心していた。誰に…?サツキだ。2通りのプランを立てろと言ったのは彼女なのだ。交渉には飴と鞭を用意せよと。まさしくその通りになった。そしていよいよ持ちかけるのだ。


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