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アンドロイド転生239

リペア室

リョウはエリカを伴いリペア室に戻って来た。エリカは柔かに微笑んでいる。リョウはエリカを椅子に勧めた。彼は唇を舐める。こいつが本当に密告者なのか?そんな事をするのだろうか?

「なぁ?ちょっとイヴと繋がってくんないかな?」
エリカは首を傾け不思議そうな顔をした。
「なんで?」
「イ、イヴの調子が変なんだ。診てやってくれ」

エリカは彼をじっと見つめた。何かおかしい。
「なんで私なの?」
リョウはまた唇を舐めた。
「イヴが…エリカを呼んでくれって言ったんだ」

エリカは彼を見つめ続けた。リョウの呼吸が少し早い。額に汗が浮いており、眼球が右左に動いている。エリカは耳を澄ませた。胸の鼓動が強い。これらは人間の緊張状態を表している。

「イヤ!」
エリカは拒否した。服従機能はないのだ。
「まぁ、そう言わないでさ。直ぐだから」
エリカは立ち上がって歩き出した。

リョウはエリカの手を掴んだ。
「ちょっと待てよ!」
エリカは間髪を入れず彼の手を振り解いた。
「あなたは何かを隠してる!おかしい!」

リョウは舌打ちをした。勘のいいマシンだ。エリカは宙空に顔を上げてイヴを見た。
「イヴ!リョウは何を探っているの?」
『あなたがランドラボにコールした内容を…』

リョウは立ち上がりワーと叫んだ。
「待てよ!イヴ!言うな!」
エリカは目を見開いた。リョウは知ってる!私が密告した事を…!2人の視線が交差した。

エリカは暫く彼を見つめていたが不敵に笑った。
「へぇ…そうなの」
「そ、そうだよ!お前は…アオイの事をランドラボに密告したな?」

リョウはエリカの顔を見つめて呆れた。
「おい…?なんでだ?」
「だって…アオイは邪魔だもん」
エリカは悪びれもせず微笑んだ。

リョウは不思議でならなかった。
「アオイも…サツキも…テイザー銃で機能停止になってたかもしれないんだぞ?」
「そうなれば良かったのに」

リョウは驚愕し、エリカは自信ありげに微笑んだ。
「この事を皆んなに言う?」
リョウはじっとエリカを見つめた。
「…ああ」

エリカはクスクスと笑った。
「お好きにどうぞ」
「お前は…おかしいぞ?」
「私は自分のためなら何でもする」

エリカは胸を逸らし、腕を組んだ。
「リョウ。あなたも邪魔ね?」
リョウの額から汗が落ちた。
「マ、マシンが人間に何をするんだ?」

「私は殺人と暴力行為は出来ないよ。でも、あなたがサキの裸を隠し撮りしてるのを知っていてそれを公表する事は出来る」
リョウの目は見開き、頬が強張った。 

「イヴは何でも知ってる。そして、私に教えてくれた。ホラ、見て」
エリカは頸を見せた。無線ケーブルが差してある。これでイヴとメモリを共有し情報を得たのだ。

「取引よ。私がランドラボにコールした事を内緒にして。そしたら隠し撮りの事は忘れる」
リョウの息が荒くなり、唇が震えた。どうする…。どうすれば良い…。だが応じるしかなかった。

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