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アンドロイド転生871

2118年9月6日 午後
東京都港区某所

パーティを抜け出して買い物を楽しんだシオン達(ルイ、カナタ、マイカ)。バッタリと近所に住むトウマと会った。約40日振りの再会に胸がときめくシオン。初恋の相手なのだ。

そのシオンに向かってトウマは遠慮がちに提案をした。モデルにならないかと言う誘いに誰もが驚いた。だが思い直す。特別に容姿に恵まれているシオンなら被写体として相応しいと。

「俺は大学で美術部のサークルに入ってるんだけど…シオンの事を言ったら皆んなが会ってみたいって言うんだ。モデルにどうかってさ」
トウマは幼い頃から美術が好きだった。

マイカは瞳を輝かせてシオンの腕を叩いた。
「シオン!やりなよ!モデル!トウマの大学ってかなり美術に力を入れてるんだよ!」
「美大じゃないよ。あくまでもサークルだぞ」

シオンはどうして良いか分からなかった。トウマと過ごせる機会が増えるのは嬉しくて堪らない。かつ、自分の容姿が優れている事も自覚している。モデルになれるなんて最高だ。

けれど…多くの人の目に注目されて描かれるのかと思うと緊張する。いや。違う。ずっと注目されたいと思っていた。綺麗な自分は人々が賛美するだろうとずっと想像していた。

だが想像するのと実現するのは違う。学校に通い始めて、生徒達のあまりの熱狂に驚いたものだ。しかし物事に執着しない現代の人々は直ぐにシオンの存在に慣れた。嵐が去ったのだ。

きっとモデルになっても騒ぐのは最初だけ…。そう思っても閉鎖的な村で過ごした彼はやはり人慣れしていなかったのだ。
「ぼ、僕なんて…そんな…大丈夫ですか…」

トウマが賛同するより早くマイカが何度もジャンプしてシオンの背中を叩いた。
「大丈夫に決まってるじゃん!皆んな喜ぶ!」
「ほ、ホントに…?」

トウマは笑った。
「ホントだよ。バイト代も出すよ。オッケ?」
「は、はい」
「じゃあ連絡先交換な!」

シオンの胸の鼓動が早くなった。今後はトウマと連絡が取れるのだ。こんなに嬉しい事はない。飛び上がりたい気持ちだった。互いにスマートリング(携帯電話)を出した。

ホログラムの個人コードが浮かぶ。シオンはトウマのアドレスを読み取った。嬉しくてリングを差している中指をそっと撫でた。自然に口元が綻んだ。トウマと親しくなれたのだ。

トウマは手を上げた。
「サンキュー。じゃあ、またな」
「あ。トウマもパーティに来ない?」
シオンはマイカの機転に拍手したくなる。

「あ。いや。今日はやめとく。宿題で忙しいんだ。模擬試験があるからさ」
「あ。そっか。分かった。またね」
4人はトウマの背を見送った。

シオンはその背中を見つめた。カッコイイ人は後ろ姿もイケテルな…。マイカは頷いた。
「よし。なんか食べて帰ろ。パーティの食事は飽きちゃった。バーガーでもどう?」

10代の少年達は喜んだ。タウンには本当に何でもあるのだといつも感心する。世の中には旨いものが溢れているのだ。世間を知ると言うひとつに食文化は大いに寄与している。

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