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アンドロイド転生982

2119年7月10日
都内某所 総合病院にて

新社会人になりMR (医薬情報担当者)として働くトウマが病院にやって来るとナニーアンドロイドのサヤカ(アオイ)と出会した。トウマは曽祖父の遺言を口に出した。

「サヤカ。困ったことがあったら言ってくれな。祖父ちゃんの遺言だ。だから守るぞ」
サヤカは泣きそうな顔をしたが微笑んだ。
「有難う御座います…」

サヤカは元人間だ。そして曽祖父の婚約者だった。24歳で事故死して80年後にアンドロイドになって目覚めたそうだ。そんな荒唐無稽な話だがトウマは今は信じている。

「あれ?トウマだ」
モネがやって来て目を丸くした。 
「何でここにいるの?」
仕事だと説明すると成程と頷いた。

モネは咳き込むと苦笑する。
「1発で風邪が治る薬を開発してよ」
「100年後は出来てるかもな」
「今!欲しい〜!」

モネは名前を呼ばれるとトウマに手を振って診察室に入って行った。
「サヤカはずっと東京にいるのか?」
「どうしようかと思っています…」

サヤカは診察室の扉を眺めた。
「モネ様の骨折はすっかり治りましたし…当初の予定のサポートはとっくに終えました。私のいる意味はないと思うのですが…」

トウマは深く頷いた。
「シオンから聞いたんだけど…サヤカはTEラボから逃亡したんだって?」
「そうです。所有者のいない野良マシンです」

「じゃあ…逆を言えばいつまでもモネといれるんだ。いればいいじゃないか」
「ですが…モネ様は高校3年生です。ナニーが必要な歳ではありません」

トウマも診察室の扉を眺めた。
「うん…今日だって病院の付き添いか」
「ええ。普通なら1人で来るべきです」
「まぁな…」

サヤカは恥ずかしそうに笑った。
「モネ様は遠慮するんです。ですが私が過保護なんです。いけないと思っているのに世話を焼くんです。離れたくなくて…」

トウマはうーんと唸った。きっと…サヤカは寂しいのだろうと想像した。未来で1人。曽祖父はもういない。モネが心の拠り所なのだろう。
「なんか別に生き甲斐を見つけろよ」 

サヤカは目を丸くした。トウマは笑った。
「モネしかいないから依存するんだ。なんか楽しみを見つけるんだよ。元人間なんだろ?趣味でも何でも作ればいい」

「ト…トウマ様は…変わりましたね…。すっかり大人なんですね。私…ビックリしました」
「ビックリついでに言うけど…俺は今…シオンと付き合ってるぞ」

サヤカはまた目を丸くする。
「え!」
「俺と…サヤカは縁があるんだな」
「そ、そうですね」

モネが診察室から出て来た。
「あ。じゃあ…行きます」
「うん。お大事にって言ってくれ。そのうちシオンと3人で会おう」

サヤカは感激した様子で何度も頷いた。そしてぺこぺこと頭を下げて去って行った。なんだ。サヤカって可愛いじゃないか。シュウ祖父ちゃんが好きになった人だもんなと思った。

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