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アンドロイド転生603

白水村:ダイニングルーム

人間達の夕食が始まった。エリカは席を立ちアリスの元へやって来て、柔かに微笑んだ。
「ねぇ?話があるの」
「えっ!あ、う…うん!」

アリスはエリカの笑顔を見て嬉しくなった。昨晩、2人は喧嘩になったのだ。いや。違う。自分の発言でエリカを怒らせてしまった。彼女はアリスがいい気になっていると憤慨したのだ。

エリカがホームの少年達をこっそりと街に連れ出した事をアリスは咎めた。だがそれは親達が追及する事で自分の立場ではするべきではなかった。直ぐに気付いて謝罪した。

だがエリカは許してくれず話を打ち切り、去ってしまった。その後もずっとアリスを無視していた。それから村に帰って来て会議。そして夕食の支度となり話す時間がなかった。

再度謝罪をしようと思っていた。エリカとは親友だし姉妹のような関係だ。どうにかして仲直りをしたかった。それが話しかけて来てくれたのだ。嬉しくなると同時に安堵した。

アリスの瞳が喜びに輝いた。
「話?本当?私もあるの。謝りたかったの」
「うん。こっちも強く言い過ぎた。ちょっと良いかな?部屋に来て欲しいの」

2人はダイニングルームを出た。アリスは浮かれて歩いた。自室に着くとエリカは振り向いた。
「あのね。モネがこれから来るらしいの」
アリスは目を丸くした。

「昨日、モネがリングをルイに貸したでしょ?ママに怒られたみたい。取りに来るんだって。麓にルイが迎えに行ったの。で、モネをここに連れて来て親達に会わすらしいの」

アリスは自分の両手を祈るように組んだ。
「う、うまくいくかな。怒られないかな」
エリカは小首を傾げた。
「さぁねぇ?人間達で勝手にやればイイよ」

アリスは思いついた顔をした。
「あ!モネとアオイって知り合いじゃない!ナニーだったんだもの!アオイが喜ぶね」
「それなんだけどさ…」

エリカは息を吸い込んだ。
「リョウがね?アオイとサツキの研究をするって言って連れて行っちゃったの。時間がかかるみたいよ?だからモネとは会えないね」

アリスはまた目を丸くした。
「研究?ほんと?」
眉根を下げてアオイの顔を思い浮かべた。
「会えないのか…。がっかりするだろうね」

エリカは残念そうな振りをした。
「そうだね。悲しむね。だからアオイにはモネが来た事は言わないようにしようよ」
「うん。分かった」

アリスは何度も頷いて心に誓う。もう私は余計な事はしない。他人は他人。本人達に任せれば良い。そして自分は自分。己の発言に責任を持つ。もう2度とエリカと気まずくなるなんて嫌だ。

エリカはアリスの決意に満ちた顔を見つめてほくそ笑む。私が怒った事が相当応えたのだろう。きっとこの先、彼女は出しゃばる事はない。素直なアリスは容易い。本当に簡単だ。


※エリカとアリスの喧嘩のシーンです


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