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アンドロイド転生670

白水村集落

エリカは飛んで行ったドローンを見つめていた。彼女にケイから通信が来た。
『会議が始まるぞ』
「分かった」

第1回目の議論。村民の有権者45人のうち滅亡派22人。存続派17人。中立派6人。だが全員が参加するわけではなく其々の派閥から代表者を2名選出し、6人で話し合うのだ。エリカとケイは纏め役だ。

滅亡派の代表は村長の弟のケンジ。存続派の代表はカフェの店主のキヨシとルイの父親のタカオ。中立派の代表は村長だった。期限を定め、約1ヶ月後に意思決定する。村の存亡が掛かっているのだ。

意見は真っ向から対立していた。ケンジは何があっても国民にならない。平家の落人の子孫という誇りを賭けて滅亡しても良いと言い切るのだ。キヨシは声高に反論する。血を残そうと。

ケンジは鼻で笑った。
「血を残す?国民になってタウンと混じったら血など残らないじゃないか。あんな残酷な奴らと混血になってたまるものか!」

更に怒りを露わにしてテーブルを叩いた。
「俺は絶対に許さん!タウンは20人も殺したんだぞ!夜襲をかけて赤ん坊だって容赦しなかった!そんな残酷な奴らなんだ!」

キヨシは呆れた。
「69年前の事をいつまでも根に持つなんておかしいぞ。もう過ぎた話じゃないか。今のタウンの人間は執着心は薄く理性的で、心は穏やかだ」

ケンジは小馬鹿にしたように笑う。
「カフェの客など呑気なもんだ。あんたは新宿で暮らしているからタウンの味方になってるんだ。良いところしか見てないと言う事だ」

「悪いところばかり見てどうする?別の側面を信じようではないか。良いか?ホームの子供達の未来を考えよう。タウンの人達と結婚させて子供を持つんだ。未来の架け橋になるんだ」

「何が未来の架け橋だ?そもそもあんたの息子のリツはタウンで暮らしているが人間には興味がないようだ。アリスと付き合っているじゃないか。まずは自分の事を顧みろ」

キヨシの顔が怒りで赤くなった。
「何だと?息子の事は関係ないだろ!」
村長が弟を見やった。
「ケンジ。失言だ。取り下げろ」

ケンジは渋々と侘びた。だが反面、小馬鹿にしたようにほくそ笑む。そうさ。お前の息子はもう何年もアンドロイドと恋仲だ。お前はきっと孫を抱く事はない。ザマアミロ。

エリカは皆に悟られないように溜息をつく。同じ話の繰り返しだ。お互いに歩み寄ろうとしない。人間とは本当に面倒臭い。
「その他の意見はありませんか?」

他の代表達は黙している。エリカは呆れる。何か画期的な意見は生まれないのか。こうなったら存続派だけが国民になれば良いではないか。そう思うが自分の立場では言えなかった。

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