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アンドロイド転生5

アオイはキサラギに言われるまま素直に立ち上がった。足元がよろける。慌てて寝台に手を着く。自身を見て驚いた。裸だった。恥ずかしさで頬が強張る。慌てて胸を隠した。

キサラギは気にも留めない。
「はい、バンザイして」
従えと内なる声が囁く。
「は、はい」

手を離しフラフラとなったが下半身に力を入れて重心を腰で支えた。両手を上げるとスルリと上から服を着せられた。袖なし膝丈のワンピース。有難いけれど、下着もなしで?とまた驚く。

「この部屋の端から端まで歩いてみて」
脚がプルプルと震えギクシャクとした。まるで産まれたての子鹿のようではないか。 だが2往復するとすぐに慣れ、すんなりと歩けるようになった。

キサラギは満足げに微笑む。
「いいね。はい。靴を履いて」
「はい」
またもや言われるままに素直に従う。

だが不安で堪らず一歩前に出た。
「ねぇ?お願いします。訳を説明して下さい。私…何が何だか分からないのです」
「大丈夫、そのうち分かるようになるから」

アオイ頭を振って不満を表す。あ、髪が短い。今になって気が付いた。肩につく長さだったのに顎ほどのボブだ。頬に当たるので耳にかけた。
「へぇ!そんな仕草をするのねぇ!」

キサラギはニッコリとした。
「早いんじゃない?良いかもね」
何が良いのかさっぱり分からない。
「じゃ、こっちに来て」

アオイは小走りで追いかけた。ドアが横にスライドして廊下に出た。広い廊下も全て真っ白で病院のように見えた。点々とドアが並んでいる。ある一室の前でキサラギは止まり入れと促された。

そこはリビングルームだった。ソファセットが並べられ、併設のキッチンとダイニングセット。奥にはベッドも置いてある。広いワンルームだった。
「テストルームよ」

「はぁ…」
「私はこの部屋の主人ね」
主人…?驚いてキサラギを見つめた。
「ああ、喉が渇いたなぁ」

キサラギはソファにドサリと座った。アオイは呆然となる。この人は…この部屋の主人…。じゃあ…私は?なに?アオイはどうして良いか分からない。黙ってキサラギを見つめた。

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